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ヨコアナ
幸せ
「わぁ、雪だ!」
今年も去年と同じ様に、空から白い雪が降ってきた
それを僕は嬉しそうに眺めて走り回る
「あんまり走ると転ぶぞー」
後ろから心配する様な声が聞こえる
「でも、せっかく降ったんだから遊ぼうよ」
素早く掻き集めて小さなボールになった雪の塊を、投げつける
「ぶっ」
まさかそこまで素早く投げてくるとは思わなかったのか
雪玉は相手の顔へと綺麗に直撃していた
相手の動きがしばらく止まる
恐る恐る様子を窺うと
半分落ちかけた雪から、二つの光った目が見えた
「うわっ」
「覚悟はいいんだな?」
さっき自分が拾った速さより倍以上の速さで雪を掻き集めると
物凄い速さでこちらへと走ってくる
持ち上げている雪はかなりの大きさで
全力で走る鬼ごっこが始まった
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「ま・・まて・・・」
途中、もう限界だと思って後ろを振り向くと
追いかけていた相手が、足を見事に滑らして
自分が持っていた巨大な雪玉に押し潰されていた
「大丈夫?」
「これぐらいでやられる・・・か」
根性で雪の下から抜け出して、こちらへと手を伸ばす
これ以上逃げると後が怖いので、こちらも手を差し出す
掴むと同時に、思いっきり引き寄せられた
「うわわわわ!」
そのまま雪の布団の中へと引きずり込まれる
「冷たい・・・・・」
「思い知ったか」
「自分で転んだくせに」
「そうかそうか、冷凍マスクがそんなに欲しいか」
片手に顔が丸々埋まりそうな雪を、こちらに近づけてくる
「いらないいらない!」
必死に抵抗しようとする
が、それがいけなかったのか
上に乗っかっていた雪が、崩れ始めた
視界が真っ暗になった
「・・・・ん・・・?」
気がつくと、部屋の中にいた
「起きたか・・」
「あ、あれ?外にいたんじゃ?」
瞬間移動した感覚になって、辺りを見渡す
心配そうな顔が目の前にあった
「すまん、やりすぎた」
手を前に合わせていきなり頭を下げられる
どうやら、雪に潰されたショックで気を失って危なかったらしい
「まぁ、大丈夫だったんだし・・」
いつまでも頭を下げられるのも何だか気が引ける
それに暴れたのは自分だったのだし
顔を上げると、そこにはいかにも救われたという様な顔があって
そのまま一気に抱きしめられた
「・・・苦しい」
「すまんすまん・・」
すぐに腕の力を弱めてくれる
「でも、寒いからもう少しだけこのまま」
しばらく、目を細めて
生き物の暖かさを感じた
「・・・・幸せ」
「そうか?」
「幸せじゃない?」
「いいや、幸せだ」
にっこり笑いあって、もう一度強く抱きしめる
此処にいる事を確かめる様に
強く抱きしめた