ヨコアナ
相談役2
薄暗い部屋にあるベットの上で、二匹の雄が絡み合っていた
組み敷かれている犬獣人の男は苦痛と快楽が綯い交ぜになっている顔をしていて
その上に覆い被さっている獅子の男は自らの雄をその中に何度も侵入させていた
奥へ奥へと押し進める度に呻き声が部屋に響き渡る
「ファウス君・・・」
獅子が相手の名前を呼んだ
それに応える様に腕を伸ばし、その身体に絡めてから唇を合わせる
そのまま獅子の男は再び動き出した
純粋に快楽を求めるには、少し動き難い状態だったが
それでも、獅子の男は満足気な顔をしていた
自身を何度も押し入れて、洩れる声を塞ぐ様に舌を差し入れる
最後に一突きすると、お互いに声を漏らした後射精した
汗と精液の臭いの広がる部屋で、自分よりも小さな身体の肩を抱いていた
「最初の頃より慣れてきましたね、フォセさん」
腕の中に居る、先程ファウスと呼んだ相手が言葉を発した
「そう言ってもらえると嬉しいよ、長い間誰かとしたことがなかったからね・・」
フォセは妻子のある身で、ファウスとは最初ただの話し相手だった
それが、自分の話を熱心に聞くファウスの事が気になり今ではこの部屋に来ていた
ファウスは男娼であり、此処へ来るとその身体を抱く事を繰り返していた
「フォセさんが初めて来てから、もう二ヶ月なんですね」
獅子の大きな胸板に顔を埋めて、その下にある少し大きな腹に手を這わせるとファウスが言う
その軽い刺激に口元を緩ませると回した腕の力を強くした
「不思議なものだな、いつの間にか君に惹かれていた」
元々男色の趣味があった訳ではなかったのだが
今はファウスに対してのみ、情欲が湧いていた
それとは別に淡い想いもあった
それを心に浮かべると罪悪感も同時に浮かび上がって、その感覚を味わう度にこの身体を抱きたくなる
既に四十を超えているというのに快楽に溺れている自分に苦笑いを零した
「ところでファウス君、頼み事があるんだが・・」
全ての思考を飛ばす様に、言葉を口にした
腹を弄っていたファウスが顔を上げる
その顔を見て一度躊躇するが、黙って頷いた
「実は妻が今実家に帰っていてね、息子の世話をできる相手が居ないんだ・・・・」
それを聞いてファウスの目が少し大きくなる
「俺に世話をしろって事ですか?」
「・・・やはり無理かな?」
駄目だろうとは言い出す前から分かっていたのだが
それでもファウスなら引き受けてくれる様な気がした
「もちろん、金は出すつもりだ」
言葉にファウスが迷った様子を見せる
やはり無駄だったかと、窓から空を見上げた
「いいですよ」
予想していなかった返事をされて、慌てて視線を向ける
「お得意さんですから、ただどれくらいの間世話ができるかは店との交渉によりますけどね」
「・・・ありがとう」
身体を抱き寄せた
首に顔を埋められると、鬣がくすぐったいのかその身体から反応があった
フォセの家までの道を歩いていた
「一週間は大丈夫だそうです、ただそれ以上は客足に響くから金を積まれても駄目みたいで」
外に出たのが久しぶりなのか、ファウスが大きく伸びをしながら言った
日頃からあの部屋に籠もりきりで、例え休みが取れても動けない事が多いのだろう
陽の光を浴びて嬉しそうに笑っていた
「いや、充分だよ・・態々すまないね」
「相談の内ってことで」
自然と笑みが零れた
ファウスに会うまでの自分とは大違いだった
昔はそれなりに笑っていたのだが、今は数えるに値しない程笑ってはいなかった
金でしか繋がっていない縁だとしても満足だと思った
「ここが家だ」
ぼんやりと考えながら歩いていると、漸く自分の家へ辿り着いた
思い返せば思い出の無い家だった
「フォセさん・・・お金持ちなんですね」
家を見上げて、ファウスが息を呑んでいた
構わずにフォセは鍵を開けると中に入る
「お邪魔します・・」
声を小さくしてファウスが続いた
「ゲイル!居ないのか!?」
太い声でフォセが声を上げた
数秒してから階段の上から物音がして、それを下りる音が耳に届く
程無くして二人の元に一人の獅子の子供が現れた
鬣はまだ生え揃っていないが、身体はフォセと似ていて親子だということが分かる
「ファウス君、息子のゲイルだ・・一週間よろしく頼むよ」
慌ててファウスが頭を下げた
フォセがやってきたゲイルに視線を向けると、こちらも礼をする
「こちらがファウス君だ、迷惑を掛けないようにな」
事前にゲイルには事情を説明しているので、それにゲイルは頷く
「今日は久しぶりに早く帰ったし、早めに夕食にしようか・・ファウス君、手伝ってくれるかい?」
「は、はい!」
ファウスを招くと、二人揃ってキッチンへと姿を消す
その場に残されたゲイルは暫く黙っていたが、その後を追った
明かりの無い寝室で、フォセとファウスが寄り添っていた
「あの・・フォセさん、いいんですか?ゲイル君が居るのに一緒の部屋で」
「そういっても、他に眠る場所も無いからね・・」
困った様にフォセも返した
急な事で其処まで頭が回らなかったのだろう
「ゲイル君には、なにも言ってないんですよね?」
「ああ、知り合いとしか言っていないから大丈夫だとは思うが」
その身体が動くと、自分を抱き締めた
ファウスを求めてその腕が伸びる
服の下を通ると掌が肌を滑って撫でる
金を払われているので、拒む権利は無かった
「声、聞こえますよ」
ファウスが言い終わると同時に唇を塞がれる
そのまま互いの声を呑み込む様にして暫く交わった
「それじゃ、行ってくるよ」
朝になるとフォセは仕事があるのか、玄関に立っていた
それをファウスが見送る
「・・なんだか、結婚したみたいだな」
扉を閉める直前にそう言って、フォセは扉を閉めた
ファウスが苦笑いをして振り返る
すると、目の前にあのゲイルが居た
「うわっ!?」
ゲイルもその声を聞いて驚いた顔をする
「あ・・ごめん、おはようゲイル君」
何度か咳をしてファウスかどうにか取り繕った
ゲイルは制服を着ていて、これから出掛けるのだろう
「学校?」
「ああ」
短く返事をすると、靴を履いてゲイルも扉を開いた
「・・母さんみたいだな」
そう言うと扉を押したのか直ぐに閉まった
それを聞いたファウスは固まっていた
暫くして動くのを再開すると、一人で家に残ったファウスは掃除に取り掛かった
するのはゲイルの世話だけでいいので、必要は無いのだが
それでも金を貰っている以上何もしない訳にもいかなかった
脱ぎ散らかしてある服を集めるが、フォセの妻は自分の分だけを別に洗濯しているのか
女物の服は何処にも見当たらなかった
両手に服を持つと雄の臭いが鼻に届いて、軽い眩暈を覚える
振り切る様に足を踏み出すとさっさと洗濯機に押し込んだ
それが終わると、次に進む
そんな事の繰り返しで何時の間にか夕方になっていた
フォセの寝室の掃除を今はしていて
昨夜自分と散々行為に耽ったベットが視界に収まった
とりあえず部屋にあるゴミを片付けていると
玄関の扉の閉まる音が家中に響き渡った
扉を閉めると、持っていた鞄を傍に置いた
軽く辺りを見渡すと朝よりも物が片付けられているのが分かる
そのまま階段を黙ったまま上った
上りきると真っ直ぐ部屋に向かう
扉は開いていて、中にファウスの背中があった
足音を聞いたのか、その身体が自分の方に向く
「おかえりゲイル君、夕飯もう少し待ってね」
まだ掃除の途中なのか、熱心にファウスは部屋を見ていた
ファウスが、掃除の途中で窓から空を見上げる
「・・・なあ」
その顔を見ながら声を掛けた
「あんた、父さんとセックスしただろ?」
空を見上げていた身体の動きが止まった
「・・えっ・・・・」
ファウスが、自分を見た
若い獅子に見つめられて、自分の身体が固まっていた
顔をしっかりと見たのは初めてで、自分よりも若いがそれでもフォセに似て精悍な顔付きをしていた
その澄んだ瞳を見つめる
「・・なに言ってるの?」
事態を呑み込むとはぐらかす様に言葉を吐き出した
「あんたから匂いがする、父さんの匂いだ」
それに加えて微かな精液の臭いもした
昨日会った時は気のせいだと思ったが、今もファウスからその臭いがするのだ
この部屋にもそれはあった
言い訳するのを無駄だと感じ取ったのか、ファウスが俯く
歩み寄るとその肩を掴んだ
「・・どういう感じなんだ?」
ファウスが顔を上げるよりも先に、その身体をベットに押し倒した
慌ててファウスが暴れるが、獅子の力には敵わないのか振り払えはしなかった
その手が身体に触れはじめる
何時の間にか、立派な雄の顔が其処にあった
後ろ手に紐で縛られていた
自分を見下ろすゲイルの顔を見る
「父さんとしてるんだろ?こういう事」
「・・いや、こういうのはあんまり・・・・ってそうじゃなくて」
フォセは何時も相手を気遣う様なやり方をするので、こういう事はしないと無駄な考えが頭を過ぎる
ゲイルが手を伸ばすと、最後に残った下着の中に差し入れた
「ゲイルく・・・んっ・・・」
刺激を与えられて、表情が歪んだ
昨夜フォセに弄られた其処は、多少の痛みを訴えていた
我慢出来なくなったのか、ゲイルが一度手を引いて服を脱ぎ捨てる
現れた雄は成熟したフォセ程ではなかったが充分な質量で勃起していて
下着を脱がせられると、唾を吐いてそれをゲイルが雄に塗りたくる
そのままほとんど慣らすことなく、ファウスの中へと押し入った
突然の事にファウスの顔は更に苦痛に染まるが
それと同じくらいにゲイルの顔も快楽に染まった
「うっ・・すげぇ・・・・」
荒い息を何度か吐くと、そのまま前後に腰を振る
フォセのやり方とは正反対だった
何時も、共に絶頂に向かって少しずつ登りつめる様な刺激を与えられる
それが今は、ただ己の快楽のためだけに腰を振る獣の道具になっていた
こういった事に慣れているファウスは、その内声を小さくするが
対照的にゲイルが喘いだ声を出しはじめる
「う、うぅっ!!」
数分の間腰を振っていると、不意に大きく呻いて身体が何度も震えた
達したのだとその顔を見れば直ぐに理解出来た
「はっ・・・ぐぅ・・・あぁ・・・・」
射精し終わったのか、身体の中にあった異物が引き抜かれる
汚れた雄は、引き抜かれると同時に跳ね上がり天を仰いだ
それから暫く、ファウスはただ為すがままに犯され続ける事になる
若いゲイルは、フォセよりも達するのが早かったが
その分何度もファウスの中に精液を撒き散らしていた
うつ伏せにされ、尻尾を掴まれ獣の様に交わり最後に雄叫びを上げてゲイルが何度目かの射精を迎える頃には
陽は完全に沈み、部屋は月の光で照らされ汗で輝く二人だけの空間になっていた
ファウスの上に覆い被さって何度も大きく息を吐いていたその身体が、動く
多少腰を振ると、既に完全に萎えた状態の雄が穴から引き摺り出されては呑み込まれた
一度呼吸を切ると、一気に全てを引き抜く
同時に今まで散々体内に吐き出していた白濁液が其処から溢れだした
そのままファウスの腕を縛り付けていた紐を解く
尻尾を垂らしたファウスは死んだ様に動かなかった
元々フォセの相手をして、ほとんど休まずに今日も掃除をしていたのだ
体力の限界はとっくに迎えていた
「・・・・ごめん」
意識がほとんど飛びかけていたその耳に、言葉が届く
薄く開いていた目を一度閉じるとファウスが腕を立ててどうにか起き上がった
衝動の抜け切ったゲイルは、ただの獅子の子供に戻っていた
「父さんの相手がどんな奴か気になって・・ごめん」
「・・・いいよ別に」
客によってはもっと乱暴に扱われる事もあるので慣れたものだった
それとは別にちょっと良かった、とは言葉にせずに立ち上がる
身体中に痛みが走り顔を顰めたが、気にせずに歩いた
「シャワー借りるよ」
後姿を見送ったゲイルは、今の事態を反芻する
辺りに脱ぎ散らした服に、裸の自分
真っ直ぐに下を見れば汚れて萎えたぶら下がった状態の自分の雄と湿ったシーツがあった
最後に、大きく息を吐いた
浴室から出ると、夕食の準備をした
二階から漸く下りてきたゲイルはファウスの顔を見ると一度俯いたが
ファウスが明るく振舞うとどうにか話が出来た
本当はファウスも話すことを躊躇っていたのだが、職業病とでもいうのか
言葉だけは口から溢れてきて普通に会話をしていた
それが逆に不自然に見えたのか、食事もそこそこにゲイルは自分の部屋へと消える
残されたファウスはフォセの帰りを待っていた
別に待っていてほしいと言われた訳でもないのだが、眠る気分にもなれず
数時間の間のんびりとしていると、扉が開く音がした
「・・まだ起きていたのかい?」
ファウスの元へやってきたフォセが目を丸くした
「おかえりなさいフォセさん、もう夕飯済ませました?」
「いや、まだだが・・・」
「じゃあ用意しますね」
先程ある程度作り置きしていたものを、直ぐに用意してテーブルに並べた
それを頬張るフォセの顔は、嬉しそうな表情をしていた
「・・最近は妻ともあまり話せなくてね」
視線に気づくと、今度は寂しそうに笑われる
食事を終えると、揃って寝室へ戻った
部屋に入ると途端に疲れが身体に回ったのか、ファウスが布団の上に倒れ込む
「大丈夫かい?」
遅れて布団に入ったフォセが、身体に布団を被せると抱き締めた
「すみません、力がほとんど入らなくて・・・」
今まで普通にしていられたのが不思議なくらいだった
「無理はしなくていい・・お休みのつもりでいてくれていいんだよ」
金を払っているのにそう言ってくれるフォセの優しさに、安心する
そのまま暫くの間互いに思いついた事を話し合った
肉体的な奉仕は出来なくとも、こうする事でフォセに奉仕は出来た
ゲイルの事は話さなかった
布団に包まれてファウスは眠っていた
朝になってフォセを見送ると、直ぐにまた横になっていた
結局昨夜は疲労によってフォセを身体に受け入れる事は出来なかったものの
金を貰っている手前、口で奉仕はしていた
疲れきった身体は直ぐに元気を取り戻せず、朝から眠りはじめて数時間が経過していた
布団が上等なのか、フォセの温もりが消えても暖かさは失われず心地良さに支配される
部屋の隅で物音がした
眠る事にも飽きてきたのでその音が耳にもはっきり届いた
薄く目を開くと、自分を見つめるゲイルの顔が目の前にあった
驚いて起き上がると、反射的に慌てて身を引いた
「な、なにもしない」
無造作に上げた腕を弄ばせてゲイルが言った
よく見れば、反省した様な表情をしていて
昨日の面影は見当たらなかった
「学校は・・・・?」
「今日休み」
「そっか・・あ、お昼作らないと」
朝食の時にゲイルが見当たらず、とりあえず食事を作って置いていたのだが
長い間眠っていたのか既に昼も過ぎている様で大きく伸びをする
ファウスが床に立つと、ゲイルも傍によって廊下に出ると階段を下りた
昼食を作ると、それを食べるゲイルを見つめる
鬣と多少の貫禄を足せばフォセとあまり変わらない顔をしていた
見つめられているゲイルは居心地悪そうにしていた
「・・いつから父さんとあんな事してたんだ?」
「二ヶ月くらい前から」
隠すのも無駄だと思いはじめていたので、直ぐに返事をした
「・・・そうか、思ってたのと大体一緒だ」
二ヶ月前から、自分の父親の様子が変わっているのにゲイルは気づいていた
昔はそれなりに笑っていた父が此処数年ではほとんど笑わなくなっていたのだ
それが、急に明るさを取り戻した
母もそれには気づいたのか二人だけの時にうんざりする程の悪態を吐かれたのを覚えている
そして、時折擦れ違う時にフォセから発せられる誰かのにおい
疑わない方が不自然だった
「ゲイル君は、フォセさんの事嫌いなの?」
自分が男娼だという事も語り終えた頃、ファウスが問い掛けた
息子にも愛想を尽かされていると言っていた言葉が浮かんだのだ
「嫌いじゃない・・好きな方だ」
寧ろ、父の居ない時に散々悪口を言う母の方が人として嫌いだった
機会はほとんど無いか、フォセはそんな言葉は決して口にはしなかった
「ファウスはどうして、ここに来たんだ?仕事とは関係無いんだろ」
無理矢理犯されても平気な顔をしていたファウスは、仕事慣れしているのも分かったが
それでも何故此処に居るのかが理解出来なくてゲイルが問い掛ける
「フォセさんはお得意さんだし、いい人だから・・・ってこういうの言わない方がいいねゲイル君には」
苦笑いを作ってファウスが謝罪する
それにゲイルも笑って応えた
何時の間にか打ち解けたのか、そのまま夜まで二人は話し続けた
ファウスが家事をするとゲイルもやってきてそれを手伝う
暇になれば、また話を始めていた
夜も遅くなるとフォセが帰ってきて、今度は三人で会話を交わす
二人が旨くやっているのかを心配していた様だったが、談笑している二人を見て胸を撫で下ろしていた
「ゲイル君はいい子ですね」
寄り添いながらファウスが発した言葉だった
寝室に入る前のゲイルは、自分に視線を向けてきたが
一度申し訳なさそうに頭を下げると何も言わずに自分の部屋へと消えた
「君にそう言ってもらえると嬉しいよ、自分が褒められたみたいだ」
裸の獅子の身体が動いて、腕を回される
今日はまだ性交に及んではいないが、互いに裸のままで布団に入っていた
「明日は早く帰れるから、君の相手ができそうだ」
疲れきっているのか、目を半分閉じながらフォセが言った
「おやすみなさいフォセさん」
ファウスの言葉を聞いてフォセが眠りはじめた
夕食の準備をファウスはしていた
流石に毎日掃除をする必要も無く、二人を見送ってしまうと
此処に居るのも少し退屈に思えてきた
扉が開かれると、ゲイルがやってくる
「おかえりゲイル君、もう少しでご飯できるよ」
それを聞いてゲイルが嬉しそうに微笑んだ
何処となくそれがフォセに似ていて、おかしく感じられる
「今日はフォセさんも早く帰ってくるみたいだからみんなで食べられるね」
帰るのが遅いフォセは何時も一人で食事をしている様で
食卓を囲む事も楽しみにしているのだろうと考えると、料理にも気合が入る
作りかけの料理を覗き込んでいると、不意に後ろから抱き締められた
振り返ろうとするがゲイルの表情は伺えず、震えた息遣いが耳に届く
「ファウスは父さんとやってるんだよな・・?」
そう言いながら、服の中に手が忍び込んでくる
「駄目だよゲイル君、もうすぐフォセさんも帰ってくるんだしそれに・・・」
流石に自分よりも若いゲイルと交わるのは、ファウスも気が引けた
それでもゲイルが本気を出せばまたこの間の様に無理矢理犯す事も出来る
それをしないという事は、性処理の道具以外の目でファウスを既に見ているのだろう
「ゲイル君、わかったから一度離れて」
このままでは料理にまで影響が出ると、声を上げる
ゲイルが離れるのを確認すると火を止めて振り返った
そのまま椅子を指差すと黙ってゲイルがそれに座る
「ごめん、時間無いからそういうのはできないけど・・」
だからといって何もしないままでは危険だと感じ取ったファウスは、屈むとゲイルに口づけをする
唾液を吐き出すと、飲み込みきれなかった分が端から零れはじめる
唇を合わせている間に、ゲイルの服のボタンに手を掛けて外すと少しずつ脱がせてゆく
漸く唇を解放すると、ゲイルが何度も大きな息を吐き出した
しゃがみ込むと首から順に肌を舌で伝い軽い刺激を与える
胸に顔を埋めると、吸い出した
微かな呻き声が聞こえる
そのまま更に下へ、臍を弄くりながらも漸く目的の場所へ辿り着く
既に其処は快楽を求めて大きく膨らんでいた
顔を上げると、恍惚の表情でゲイルは自分を見ていた
優しく笑い掛けると、ズボンと下着を脱がした
改めて観察してみると、陰毛も完全には生え揃っておらず
大きさでフォセにはやはり劣るが
それでも今か今かと射精を待ち望んでいるのか、透明な液体を出しては硬く何度も震えていた
手を伸ばすと、液体の出ている部分を指で押した
もう一度声が上がると出てくる量が増える
そのまま執拗にその部分を指で押したり擦っていた
先程まで入っていたファウスの唾液が、だらしなく口を開けたせいで大量に零れて胸を伝っていた
放心状態のゲイルを更に苛める様に、そのまま一度強く雄を握った
悲鳴に近い声が上がる
それに構う事無く直ぐに手を放すと今度は口に咥えた
「うあっ、ふぁ、ファウス・・・うっ」
思わずゲイルが腕をファウスの頭に向けて差し出すが、手首を掴んでそのまま下ろした
口の中に含んだ雄は震えながら更に質量を増す
「ファウ・・うぅっ!!」
これ以上無い程に顔を歪ませると、ゲイルが前屈みになって身体を跳ね上がらせる
その瞬間に入っていたゲイル自身が喉に痞えて、ファウスはそれを吐き出した
そのままゲイルが射精を迎えると、白濁液が飛び出してファウスの顔を汚す
慌ててファウスが再度口に含むと舌で刺激を与えた
情けない声を何度も上げてゲイルが全てを出し切る
治まった頃に閉じていた目をゲイルが開くと、自分の雄が咥えられているのと
頬を汚したファウスの顔があった
口の中に広がる精液の味に、顔を多少顰めていた
それでも慣れた味なので直ぐに飲み込むと、未だに咥えたままのゲイル自身を綺麗にする様に舐める
「ファウス・・・入れたい・・」
汚れを舐め取る間に、萎えたはずの雄はまた硬度を取り戻しかけていた
ある程度綺麗になったのを確認すると、顔を上げてゲイルの服を戻しはじめる
「もう駄目だよ、フォセさん来るし・・・やっぱり、変な影響与えそうだしね」
既に充分与えていると頭の中で別の自分が言い放ったが、無視してゲイルに口づけた
意外にも今度はゲイルが舌を差し入れてくる
暫くそうした後で離れると、頬に付いた汚れを拭き取ってからうがいをしてファウスが調理に向かった
残されたゲイルは、やはり無理矢理犯したあの日と変わらずに俯いていた
フォセが帰ってくると、何食わぬ顔でファウスはそれを迎えた
ゲイルも覚られるのは避けたいのか、出来るだけ明るく振舞う
「なんだか久しぶりな気がするよ、こうしてゆっくりとするのは」
ファウスを見つめてフォセが言う
それに苦笑いで応えた
間に居るゲイルの事が気掛かりで、食事に集中出来ないのだ
フォセが自分に話し掛ける度にその顔は曇る
それでも、フォセが話し掛けると直ぐに表情を戻していた
食事を終えて皿を片付けていると、フォセが背後に立った
「先に待っているよ・・」
黙って軽く頷くと、フォセがそのまま階段を上っていった
片付けが終わって振り返ると椅子にはゲイルが座っていて自分を見つめていた
「・・行くのか?」
「お客さんだからね、フォセさんは」
傍を通り過ぎようとすると腕を掴まれた
「・・ごめんね」
掴んだ手に手を重ねると力が弱まり、外すとそのままファウスも姿を消した
大きな腹の上に手を置くと、衝撃に備える
フォセが腰を強く打ちつけた
「んっ・・フォセさん、声が・・・」
口を開くと同時にもう一度深く突かれる
噛み殺そうとした悲鳴が、洩れて部屋に響いた
「ゲイル君に聞こえますよ・・」
最初は優しく自分を抱いていたフォセが、この日は段々と乱暴になっていった
「・・・君が欲しいんだ」
倒れ込もうとするファウスの動きを止めるとその肩を掴む
肩に力を掛けて身体を下ろされるのと同時に異物を肛門に押し入れられて、堪えきれなかった叫び声が溢れた
先程のゲイルの様子を思い返す
流石にもう聞こえているのは分かっているが、それでも必死に抑え込もうとした
肩を掴んでいた片方の手が下ろされると、ファウスの雄を包み込んだ
そのまま更に腰を打ちつけ、身体を動かされ、自身に刺激を与えられる
「フォセさっ・・ひっ・・・うあぁ!!」
一際大きく啼くと、フォセの手の中で絶頂を迎える
ファウスの震える身体に何度も自身を入れると、フォセも呻いて射精した
射精しながらもファウスの雄を扱き上げていて、段々と意識が遠くなるのを感じた
最後に見たのは、自分を固く抱き締めて腰を振るフォセの顔だった
痛む身体を叱咤して、起き上がった
窓から外を眺めると既に陽が傾いていた
昨夜のフォセの動きは今までと比べると異常だった
ファウスが気を失うと動くのを止め、回復するとまた腰を振る
空が白みはじめるまでその状態が続いていた
自分を見つめるフォセの顔は、快楽に染まっていたが
申し訳無さそうな印象も受けて何も言わずに抱かれ続けた
キッチンの椅子に座って、ぼんやりと今後の事を考えた
一時間も経てばゲイルが帰ってくるのだろう
それをどうするのか、ひたすら考える
出て行くのは容易い事だが、金を貰うという事と
フォセの顔を思い浮かべるとそうする訳にもいかなかった
思考を巡らせる事に没頭していると扉が開かれる
何となく顔を上げると、ゲイルが其処に居た
目が赤いのは、声が聞こえて眠れなかったのだろうという事が頭を過ぎる
「・・・おかえり、早いね」
「普通・・のはず」
揃って時計に視線を向けると、確かに針は何時も通りの位置にあって
自分が長い間考えに耽っていたのが分かった
立ち上がると夕食の準備に何も言わずに入る
ゲイルも何も言わなかった
互いに何も言わずに、暫く料理を貪っていた
「・・・美味いな」
ぽつりとゲイルが零した
それにファウスが顔を上げる
「よかった、自信無かったんだけどね」
幼い頃からほとんど料理というものはしたことがないのだ
今まではフォセが作り置きしたり、ある程度下味をつけた物を置いていたので何とかなったが
それも底を尽きはじめて焦っていたところだった
過去に料理好きの客が話していた言葉をどうにか思い出し、それを頼りに必死に手探りで調理に臨んでいた
「こういうの食べるの久しぶりだ・・・」
言いながら、ゲイルが料理を食べ切る
満足した様に腹に手を当てていた
次には途端に寂しそうな顔になると、ある一点を見つめた
同じ様にその場所を見つめると写真を見つける
写っているのは若いフォセと、足元に居る小さな子供はゲイルだろうか
そして二人の隣に女も居た
三人とも笑っていて、フォセは照れた様子も滲ませていた
「昔は、うちもあんな風だったんだ」
懐かしそうにゲイルが呟いた
「でも、最近は母さんはよく出て行くし・・・父さんも笑わなくなった」
「ご、ごめん・・」
自分の事を責めているのかと感じ取ると、慌てて謝った
それに首を横に振られる
「ファウスは悪くない、ファウスが居るから少しだけ笑うようになったんだ父さんは」
負い目を感じているのか、フォセは前よりも優しくなった
そんな事をされなくとも、自分はフォセを信頼していた
悩んでいるのは父と母の関係だった
フォセの悪口を聞かされる度に頭を抱えたくなる
「俺は、父さんも母さんも大好きなんだ・・どうしてこうなるんだ?」
最近では離婚という言葉も、母の口から吐き出された
頭の中が段々と滅茶苦茶になるのを感じると、自然に涙が零れはじめる
ファウスが立ち上がった
椅子に座って片手で目を覆っていたゲイルの前に立つと、身体を抱き締める
そのまま背中を擦った
「・・ごめんね」
悪くないとゲイルは言ったが、それでもフォセが自分の所に来るのは事実で
泣き出したゲイルを抱き締める事しか出来なかった
胸に顔を埋めると獅子の子供が何度も嗚咽を漏らす
ひんやりとした感触が無くなるまで、胸に抱き続けた
小刻みに震えていたゲイルの動きが治まりはじめる
身体を離すと目が腫れていて更に酷い顔になっていた
「顔酷いよ・・」
苦笑いをすると、ゲイルも同じ様に笑った
その身体が立ち上がると顔を寄せて口づけをされる
数歩下がると壁に背中をぶつけた
「駄目だよ、フォセさんももう少ししたら帰ってくる」
そう言うが、ゲイルは止まる様子を見せなかった
「好きなんだ、ファウス」
泣いていた子供の顔が、やはり立派な雄の顔に変わる
距離を更に詰めようとしたところで直ぐ隣にある電話が鳴った
それに視線を向けた後ゲイルを見る
一度渋る様子を見せたが、ゲイルが受話器を拾った
「・・うん、わかった・・・頑張って」
十秒経つかどうかの短い時間に、それだけをゲイルが言うと受話器を置いた
「父さん今日は忙しくて帰れないって」
それを聞いて、ファウスは焦りを見せる
それとは別にだから昨日は激しかったのだろうかとどうでもいい事を考えていた
そうしている間にも再びゲイルは迫り、股間に手を伸ばして擦られる
「・・・ここじゃ駄目」
そう言うのが、精一杯だった
フォセの寝室のベットの上で、二人が絡み合う
座って足を広げたゲイルの前に同じ様にファウスも座り、顔を向けると唇を貪る
遠慮がちのファウスも、流石に引けないと感じ取ったのか抵抗も微々たるものだった
腕を回すと既に上半身裸のファウスの肌を撫で回す
その手が下へ向かうと、ズボンの中に入れられ男根を掴む
昨夜の事を思い返して、痛みを感じない程度に優しくゲイルが扱きはじめた
刺激を与えられて上手く頭の働かないファウスは、腕を後ろへ回すと
布地の上からゲイル自身に触れる
興奮が高まったのか、ゲイルが首筋に顔を埋めると軽く歯を立てる
それにファウスの身体が震えたが、牙を通す事がないと悟るとまた刺激を受けるのに没頭していた
舌を伸ばすと擽る様に首をなぞる
自身を押さえ込む服を邪魔に感じたのか、一度手を放すとファウスがズボンと下着を脱いだ
脱いだ服が足元まで来たところで、ゲイルが離れるとその身体を引いて布団の上に倒す
覆い被さって一度抱き締めた後、起き上がるとゲイルも身に着けていた下着をずり下ろした
まだ完全に剥けきっていない状態だったが、これから与えられる刺激を待ち受けるかの様にそれが大きくなる
完全に勃起すると、皮はほとんど剥けていた
ファウスの上に倒れると、その腹に自らの雄を擦りつける
擦る度にその顔が壊れた様に歪んだ
身体を重ねると腰を動かす
ファウスの胸、腹、足、性器、同じ部分が自分とぶつかり合う
「あ・・・ファウッ・・」
喘ぎながら、最後に腹に強く擦りつけるとそのまま射精を迎えた
ファウスの腹の上を白く汚してゆく
このままファウスと眠りに落ちたい欲求に駆られるが、腕を立てると起き上がった
自分が出した汚れを指に掬い取ると、ファウスの股の間に滑り込ませる
肛門に指が届くとファウスが軽く目を開いたが、何も言わなかった
指を二本同時に入れる
くぐもった声が聞こえたが構わずに突っ込んだ
そのまま中を弄くっていたが、一度手を抜くとそれをファウスの口の中に入れる
入れられた指が舐められる感触に、僅かに口を綻ばせた
唾液を充分に受け取るともう一度それを体内へ侵入させる
慣れてきたのを確認すると、また指を抜いて今度は自分の唾液を持たせて三本目の指も入れた
中で指を折り曲げると、ファウスから確かな声が上がる
顔を上げると自分が想いを寄せた優しそうなファウスは消えていた
それに代わる様に、今か今かと自分の中に侵入する雄の存在を待つ扇情的な顔があった
指を引き抜くと、その身体を起こしてうつ伏せにさせた
振り向いたファウスは尻尾をくねらせてゲイルの侵入を待つ
一度達した雄はそれを見て再び硬さを取り戻す
ファウスの呼び掛けに応える様にゲイルが腰を当てると、手に握った凶器を押し込んだ
「・・・ゲイル君・・」
ゆっくりと進むその感覚を受けて、ファウスが吐息を漏らした
奥まで入るのを確認するとゲイルが腰を振りはじめる
雄を突き刺す度に、布団に顔を埋めたファウスのくぐもった悲鳴が耳に届く
突き刺す瞬間やその直後、躍っていた尻尾を興奮に煽られて掴む時
一瞬一瞬のファウスの表情は、後ろから突かれて顔を布団に埋めている今では見えなかったが
その全てを頭の中で鮮明に想像すると、全ての表情が快楽に染まる様に腰を振り続けた
「い、いくっ・・グッ!!」
頭の中が、白く染まる
雄叫びに近い声を上げると、ファウスの上に覆い被さって二度目の精液を放った
忘れていた心臓の鼓動や、呼吸の煩さが耳に飛び込んできた
ファウスの中から自身を引き抜くと、その身体を仰向けにしてから抱き締める
足を上げさせると、萎えかけた状態の男根をファウスの中に入れた
「好きだ、ファウス」
自分と同じ様に息を吐いていたファウスが、自分を見つめる
その股間にはまだ達していない雄が、存在を主張していた
口づけをしながら腰を振り出す
勃起するのに時間は掛かったが、若い自分の雄は直ぐに大きくなった
それでも流石に長い間交わっていたために痛みを感じる
「ファウス・・俺を見てくれ、父さんの子供とかじゃなくて俺を・・・」
自分を受け入れ様としなかったのは、フォセの子供だという想いが強かったのだろう
それだけの事で自分は受け入れられないのかと思うと、急に物悲しくなった
「・・ゲイル」
ファウスが名前を呼んだ
何故だか、それでまた涙が零れてくる
ゆっくりとその胸に顔を埋めた
子供が駄々を捏ねるのに、目の前のゲイルは似ていた
フォセと散々交わったベットの上で今はその子供と深く交わっている
それに奇妙な違和感と、罪悪感を感じた
「ファウス・・・」
泣きはじめたゲイルは、そのまま腰を前後に動かした
その身体を受け止める
今だけは、この身体を受け入れようと決めた
「ゲイル、もっと強く」
耳元で囁くと、動きが激しくなった
今までのどのやり方とも少しだけ違う、一つ動く度に何かを感じる動き
何時の間にか自分も声を上げていた
「んっ・・ゲイル・・・・あっ!」
高ぶらせる様に声を出した
煽られてゲイルの動きは更に強くなる
「ゲイル・・で、出る・・・」
腹の間で擦られているファウスの雄が、大きく跳ね上がると達した
か細い喘ぎ声がゲイルの耳に届くと、ゲイルが最後に大きく自身を突き刺した
「ファウス!がっ・・・ぐぁ!!」
ゲイルが絶頂を迎えた
既に痛みしか感じていないのではないかとファウスは考えていたが
その顔は、涙を流しながらも幸福そうに微笑んでいた
縛られる様に回された腕に抱き締められながら、ゲイルと寄り添っていた
汗ばんだ身体がぶつかると多少の不快感を覚えるが
それよりも強い疲労が互いの身体を支配していた
ゲイルが腰を動かすと、ファウスの腹に雄が擦りつけられる
僅かに硬度を取り戻していたが流石にこれ以上する気は無いのか
強く抱き締めるとゲイルが動かなくなる
交わっていた間とは違い丁寧に扱われる
昔のフォセもこんな感じだったのだろうかと考えるが
途中で口づけをされると、思考は遠くに行ってしまった
次の日から、ゲイルは自分を抱かなくなった
それに代わる様に前にも増して話をして、笑顔を振りまいていた
漸く帰ってきたフォセもその顔を見て不思議そうにファウスへと視線を送る
三人が揃うと、話は絶えずに何時までも家の明かりは消えなかった
元々孤児の様なものだったファウスは、初めて家族の暖かさを知っていた
もっとも、自分はその代わりでしかないのだが
そんな考えも忘れさせてくれるかの様に二人はファウスに接してくれていた
一週間が終わるまで、ファウスは家族としてその家に居られた
そして七日目が終わると、ファウスは家の玄関に立っていた
「それじゃフォセさん、ありがとうございました」
靴を履いて振り返るとにこやかに挨拶をした
フォセも応える様に笑ったが、寂しそうな様子もちらつかせていた
「ゲイル君もいい子で、将来が楽しみですね」
その隣で、自分に視線を送るゲイルの顔を見る
目が合うとその顔が俯いて視線を逸らされた
「またね」
短くそう言うと家を出た
まだ朝の早い時間だからか人気は感じず、何処か晴れ晴れとした気分で道を歩く
戻ったらまた今までの生活が始まるのだと空を見上げてぼんやりと思っていた
丁度その頃に、自分の名前を呼ばれた
振り返ると、息を切らしながらこちらに向かって全速力で走るゲイルが居た
傍まで来ると二度三度と大きく深呼吸をしてから顔を上げた
無言で腕を引かれると抱き締められて唇を奪われる
辺りに人が居ないかどうかに意識が傾いて、純粋じゃないなと内心苦笑いをした
唇を放すとゲイルは視線を逸らさずに真っ直ぐに見つめていた
「・・また、来てくれるか?」
「休みすぎると客足に響くから、当分は無理かな」
少し考えてからそう返す
「ファウス、俺は・・・」
続きが口から吐き出されるよりも先に首を横に振った
「ゲイル、他にもっといい人がいると思うよ」
少なくとも男娼の自分よりは身分の良い者が、他に数え切れない程居るだろう
ファウスと同じ様に首を横に振ると、腕の力が強くなる
「来れないなら、俺から行く・・今は金も無いから無理かも知れないけど・・・」
何時かゲイルが来る日まで、自分はこの仕事を続けているのかと疑問が過ぎるが
気にせずに腕の中でもがくと解放された
「なら、今度会う時はお客さんだね」
そう言うと数歩下がった
「ありがとうゲイル、楽しかったよ・・家族みたいだった」
手を振ると、ファウスは踵を返してまた歩きはじめた
それをゲイルは見送る
「・・・客以上になってやる・・」
小さく呟くと、振り返ってゲイルも足を踏み出した
とりあえずはファウスの客になれる様に、真面目に生きようと決めた