ヨコアナ
7.独占欲
湖で互いの身体を洗うと、僕達は早めに住処へと引き上げた
湖で持っていた衣服を全て洗ったので、流石に全裸のままで何処か遠くに行くなんて事はしなかった
住み慣れた場所に戻ると、新しい服を着て遅い昼食を食べた
元々空腹だったのに激しく交わった後で食欲は止められず
食べ終わると暫くの間は横になって食休みに没頭する
「マグ」
名前を呼ばれて、声の先を見る
花瓶に見立てた入れ物に挿してある花をラインは見つめていた
次に僕に視線を向けて、何かを期待した様な顔をされる
それに微笑むと、僕は身体を起き上がらせた
ラインから花瓶ごと受け取り、中の花を取り出す
手に持つ、花を掲げて眺めた
気休めに水には入れてみたけれど、根の部分を切り取ってしまっていて僅かに萎れていた
「はい、ライン」
僕が花を差し出すと、ラインの目が見開かれた後にっこりと微笑まれる
頭を差し出して来たのでそのまま耳に引っ掛ける様につけてあげると、嬉しそうに唸って尻尾を振り回していた
それを見て笑いながらも、僕は外へ出る
何時もラインが見張りをしている場所の直ぐ横にある道具の山へ向かう
見張りだけをしているのも退屈なのか、軽い武器の様なものも時々作ってラインはそれを村に売りに出ていた
その中からすり潰すのに必要な物だけ取り出すと、傍に干してあった花の根も一緒に取る
この花の根が、薬になるのだった
充分に乾燥しているのを確認してから、再び穴倉に戻る
外ですり潰せば、不意に吹く風に吹き飛ばされてしまうため
そういう意味では、この穴倉は絶好の場所だった
僕が薬を作りはじめると、ラインは寝転がりながらそれを観察する
大きく転がる時は花を取り、転がり終えてからまた花を付けて一人で遊んでいた
薬を作る時の邪魔は流石に困るので、僕には好都合だった
そのまま、すり潰す作業を繰り返す
汗が落ちない様に何度も拭いながらすり潰していると、途中でラインが代わってくれて随分作業が楽になった
粉末状になった根を手に取り、もう一度水気が無いか確認する
「思ってたよりよくできたな・・・これなら、高く売れそう」
元々希少価値のあるものだ、この辺りで高く売れるのかは分からないが
価値があれば物々交換でいい物が取れるし、何時か都会に帰る事があれば其処ではかなりの高値になる
早速小さい袋に零さない様に詰めると、ラインを誘って二人揃い外に飛び出した
ラインの休みなのだから、資料の事も忘れて村に遊びに行くのもいいだろう
風の心地良い午後だった
強い日差しが弱まり、まさに絶好の散歩日和と言ったところで
そんな中で談笑しながら村に辿り着くと、ラインは早速走り出す
村の者に挨拶をすると、それで果物が貰えたのか嬉しそうに口に咥えて戻ってきた
僕の分も貰ってきていた様で、礼を言ってそれを受け取ると渾身の力を入れて齧る
ラインは簡単そうに噛めるのに、どうにも顎の力が違うのか僕は最初の内は上手く食べられなかったのだけど
最近になってようやく、同じ様に食べる事が出来る様になった
肉に関してもそうで、臭いが酷かったはずなのに今ではあまり抵抗を感じない
少しずつ、僕の身体が野生に近づいているのだろうか
気になって身体のにおいを嗅いで見ても、自分のにおいだとよく分からない物だった
僕が少しずつ食べ物に慣れてきたのがラインも嬉しいのか、時々僕から離れては何か食べ物を持ってきてくれた
監視人の仕事をしているラインは、給料として金銭ではなく
村の物を好きにしていいという権利の様な物がある程度与えられているのだろう
もちろん過ぎればそれも出来ない事になるが、普段は僕と二人で森の中で果物を探しているので
時折此処に来て食べる程度では、何の問題もなかった
「さて、この薬・・どうしようかな」
とりあえずは、此処で売れるものかどうかを調べなければならない
幾つかある布を広げてその上に品を置いただけの店の中に、一つ薬の店があるのを見つけて其処に駆け込む
店主は外から来た僕を見て一度驚いたけれど、ペンダントもつけている今は直ぐに普通の客と見なしてくれたのか
僕が挨拶をして薬の袋を取り出すと、受け取り鑑定を始めてくれた
暫く眺めてから、店主は買い取りの値を言う
物々交換でもいいし、硬貨も一応は扱っていた
硬貨の方が価値は高いけれど、この辺りではあまり使える店が無いというのが残念なところだった
言われた額で、僕は考えに耽る
直ぐにこれを何かと換えるには此処しか場所は無い
ただ、この薬の価値はやっぱりこの村では大した事ないようで
それならば、暫く取っておくのも悪くはなかった
どちらに転んでもいい様に、態々乾燥させたのだから
「・・また後にするよ、ありがとう」
とりあえず、決断は先送りにした
店主から袋を受け取ると立ち上がる
振り向くと、汗だくになって何度も深呼吸を繰り返すラインが立っていた
「・・・・・・・・・あ、ごめん」
どうやら、僕が突然居なくなった様に見えて駆けずり回っていたのだろう
そんなに遠くに行ってはいなかったのだけど、僕が薬屋に用があるとは思わなかったのか見つけられなかった様だ
謝ると、直ぐに僕に食べ物を渡して空いた腕で抱き寄せるとぐりぐりと身体を擦り付けられる
人目があるから止めてほしいと思いつつも、心配させてしまったのだから今は何も言わなかった
そのまま、食べ物を食べながら村の中を回る
他所者はあまり来ない方がいい、それに僕のする事に反対している者も当然居る
そう思っていたから今まで村にはほとんど近づかなかったけれど、証となるペンダントもある今は大丈夫らしく
ラインも何時もはただ挨拶を交わして食糧を貰うだけの村なのに、喜んで案内をしてくれていた
その案内の途中で、人だかりが出来ているのを僕達は見つける
「なんだろ?」
ラインに問い掛けてみるが、ラインも見当がつかないのか首を傾げていた
不思議そうにしていたラインの目が、一際大きくなる
視線の先を見ると、あのロンの姿があった
ラインがロンを殴り飛ばしたあの日から、ラインはロンとは会っていない
普段は族長の家の奥で仕事をしているロンとの再会は、あまり望んでいないのだろう
ただ、今は様子が違っていた
何時にも増して無表情だったけれど、その顔には焦りも微かに見えたのと
ロンを迎えた家の人が縋る様に見つめていたのが僕には気に掛かった
「マグ、マグッ」
二回、気づいて貰える様に僕の名前をラインが口にした
食べるのもそこそこに顔を向けると、浮かない顔をしていて
どうやら周りに居る人に事情を聞いたのだろう、心配そうにロンが入っていった家屋を見つめていた
「どうしたの?」
事情を聞くために、ラインへ問い掛ける
「・・・・・・・・・・・・・病気」
悲しげに、ラインは呟いた
家の前に僕は立った
周囲から僕に視線が注がれる
「ライン、ここで待ってていいよ」
中にはロンが居る、ラインは複雑な気持ちなのだろう
何も言わず、ラインは建物に背を預けると入口を見張る様に動かなくなった
そのまま布を手で払い中に入る
中では、微かな泣き声と
歯痒い、という表情を強く出したロンが居た
その足元には横になったまま動かない少年が眠っていた
時折浮かされた声を上げている事から、彼がラインの言っていた病人なのだろう
僕の足音を聞いて顔を向けたロンは、次には鋭く睨んできた
ラインに劣らないその視線は並みの人なら動けなくなる程だったけれど
必死に耐えて僕は歩み寄る
「何の用だ」
答えずに、病人の横へと僕は辿り着く
今にも飛び掛かり僕を噛み殺しそうな顔をロンはしていたが、流石にそんな事はしないのだろう
ただ、他所から来た僕が妙な事をしないかを警戒していた
「容体は?」
「・・・・・・医者が言うには長く持たないそうだ、薬が無い」
渋った仕草をした後に、吐き捨てる様にロンが言った
それを聞いて僕は袋を取り出して見つめる
万病に効く、確かにそう本には書かれていたがこれに効果があるのだろうか
元々僕は医者でもない、でもこのままだと目の前の少年は死ぬのかも知れなかった
一度息を吐いた後、持っていた袋をロンに差し出した
「これ、あげるよ・・・効果があるのか分からないけれど」
突然の事に、ロンは暫くの間固まっていた
それでも他に縋る物が無いからか、手を差し出す
その上に袋を置いた後、本に書かれていた通りの一回、一日分の量を伝えてから足早に外に向かう
入口で布を退けると、ラインが中の様子を横目で窺っていてロンと目を合わせていた
「帰ろう」
そう言うと、直ぐにラインは僕を見てから先を歩き出した
そのまま日持ちする食糧と幾つかの果物を貰ってから村を後にした
数日後、村に様子を見に行ったラインによると薬が効いたのか子供の容態が良くなったという知らせを持ち帰ってくれた
「薬、売らなくてよかったね」
言いながら、ラインの持ってきたお土産を口にする
僕は資料の纏め作業で行けなかったので、どうやらラインにお礼と言って色々渡してくれた様だった
「ねえ、ライン」
二人で、普段は食べられない珍しい果物に舌鼓を打ちながら僕は口を開く
ラインは僕の声を聞くと、慌てて口の中の物を飲み込んでから指についた汁を舐め取っていた
「僕がまたロンの所に行ったら、怒る?」
「・・・・・・」
沈黙したまま、ラインは僕を抱き寄せる
嫌がっては居るのだけど、前の様に不快感を剥き出しにはしていなかった
そのまま暫くの間、ラインは僕の事を放してくれなかった
床に這いつくばる様にして、視線を上げた
胡座を掻いたロンの前で全裸の僕は伏せたままだ
対するロンは上下共に立派な服を着ていて、まるでペットにでもなった気がした
身体を起こすと、ロンの鼻先まで顔を近づけて軽く舐める
それでロンが口を開き、接吻の許しを出したのを確認すると口づけた
ロンの唾液が舌に乗って僕の口内へと侵入してくる
一頻り受け取ると、口を離してからロンの首筋に今度は顔を当てる
首から始まった愛撫は、途中で胸で止まると執拗に吸い上げる
ロンの身体が微かに強張ったのが伝わってきた
こんなにも丁寧にロンに接するのは、これが本当の香り付けだからだった
前回はロンも、時間が取れずに強行に走ったけれど今回は違う
僕から申し出て、互いに時間の合う日を決めたのだ
右胸に顔を埋めながら、左胸にも手を添える
ロンの心臓の音が掌に伝わった
「もういい」
短く言われると、頷いてから下がるのを再開して股間へ辿り着く
既に大きくなっていたロン自身を服の間から痛くない様に抜き出しそれを咥えた
ラインよりも太いそれに、慣れない僕は何度か吐き気を覚えて目尻に涙を浮かべる
それでもマズルの長い犬人である僕は、深く咥える事には向いている様で
全て押しこむと、長い舌で裏筋から付け根までをなぞってロンを責め立てた
口内にあるロンの肉と、腹筋がびくびくと震える
それで、透明な液体が溢れ出ているのが伝わった
一度吐き出してから、震える砲身に頬ずりをする
それを見計らってロンは立ち上がった
直ぐに僕も上半身だけを立たせると、今度は立ったままのロンに奉仕をする
先程までは弄り難かったロンの玉の部分を、脚を開かせてから何度も舐めたり口に咥えて吸い上げる
「ッ・・・・」
声を抑えた様だが、それでも脚が震えて目を瞑ったところを見るとどうやら感じている様で
付け根の部分から舐め上げながら袋を揉みしだくと、嬉しそうに棹を震えさせていた
「出すぞ・・・」
堪え切れなくなったのか、そう言うとロンは手を伸ばす
僕は少し身体を引いてから、ただ待った
自分自身を乱暴に扱き上げて、僅かに唸るとロンが絶頂を迎えた
僕の顔を狙いながら吐精をしていて
それをしっかり浴びる様に、僕は時折位置を調節していた
香り付けのためにロンは禁欲をしていて、大量の精液が僕の顔から垂れて身体も汚しはじめる
射精をしながらも、ロンは自分の手を止める事はしなかった
全てを出し切ろうとしているのだろう、勢いが弱まるともう片方の手で僕を乱暴に引き寄せて顔中に性器を擦りつけていた
射精が完全に終わると、綺麗にする様にもう一度ロンの肉を咥える
ロンの顔は、既に無表情に戻っていた
ロンも服を脱ぎ捨てると、ついに本気で僕を犯しはじめる
背中にその存在を感じながら、僕は荒く呼吸を繰り返していた
両脚を掴まれながら力強く突き上げられる
「あうぅ!!」
太い砲身に一気に貫かれる感覚に、声は抑えられそうもない
ラインに開発された其処を更に広げて、嫌という程に叩きつけられる
目の前に置かれている鏡には、ロンの肉を限界まで肛門の穴に捩じ込まれて喘ぐ僕の姿が映っていた
この辺りでは鏡があること自体が珍しい、力の象徴として置いてあるのかも知れない
今はそれが、僕の羞恥と背徳を掻き立てる
あんなにラインを大切に想って、一緒に居る事を望んだ癖に
今はロンに犯され、浅ましく喘いでは直腸に侵入した肉を締め上げて更に催促している
ラインは僕が此処に来る事を結局は許したが、それでも今の僕を見たらどんな風に思うのだろうか
考えに耽っていると、凄まじい力で一突きされる
思わず声も出せずに、痛みに僕は全身を痙攣させた
鏡を見れば、僕が考え事をしているのに気づいたのか睨む顔のロンが居て
僕は慌てて身体に力を込めた
この間の様な、ただの性行為ではない
森の奥に行きたい者が、頼み込んで族長の息子に時間を取ってもらい自ら進んで交わっているのだ
それを思い出すと、今は他の事を考えるのは止める事にした
胡座を掻いたロンの上で、もっと強く犯してくれる様に僕は懸命に腰を振る
時々ロンの太股に触れながら顔を向けると、何度も強く唇を吸われた
吸いながら、ロンは両手を前に出し僕の身体を激しく弄る
身体全体に行き渡る愛撫に、口を離した僕は盛大に喘いだ
「ふあっ・・ロン、いいよ・・・もっと・・」
言葉に反応して、ロンは突き上げてくれる
「ひっ!!」
根元まで抉り込む様な挿入に、僕は悲鳴を上げる
鏡に映ったロンの砲身は、何度も震えながら僕の中に埋められていた
ロンの突き上げに僕の性器は震えながら先走りを吐き出す
ロンに突き上げられると、身体の中が異常に熱くなるのを感じていた
「あああぁぁ!」
背後に居るロンが驚く程、僕の口から声が出る
驚きながらも、流石に動きを止めることなくロンはピストンを続けた
「あっ、駄目!!出る!!!!」
数秒後に僕の全身は痙攣すると、鈴口から透明な液体が飛び出す
精液でも先走りでもないそれを見て、僕は狂った様に喘ぎながら出し切った
悔しいけれど、身体の相性では僕とロンは相当いいらしい
ラインの時には無い初めての身体の反応に、僕は理性を失っていた
ロンにとってもそれは同じ様で、急に耳に当たる声が荒々しくなる
「ハァッ・・・・出すぞ・・うぅっ!!!」
「ロン、来て!!」
最後まで、ロンを求める様な事を僕は口から吐き出した
臭いを取るためなのか、本心なのか僕にはもう分からなかった
僕の身体を片腕で抱き締めながら、もう片方の腕で僕自身を扱き立ててロンは絶頂を迎える
それと同時に僕も達して、勢い良く飛び出した精液は肩を飛び越えて首筋を舐めるロンに掛かった
ロンとの性行為に備えるため、僕も数日の禁欲をしていたせいで辺り構わずに精液は飛び散る
僕の中にあるロンも、まだ二回目の射精だからか
鏡は、肉のびくびく脈打つ様を映し出していた
ロンの精液が、僕の中に注がれているのだろう
それに、微かに後悔を覚えた
互いに射精を済ませると、ロンから離れて僕はまたその性器を咥える
一度達する度に綺麗にするのが決まりの様で、それが終るとロンが覆い被さり再び行為は始まる
ただ臭いをつけるだけなら、抱き合った後に身体に何度も精液を掛けてもらえばいいのだが
禁欲をさせた分、僕はロンの肉欲が治まるまで解放されることなくただ犯される必要があった
それが位の高い者への礼儀の様で、だからこそ身体に掛けるのではなく中に出されるのも仕方のないことだった
ロンが屹立した砲身を僕の中に突き立てる
喘ぎながら、段々と僕は思考する事を投げ出しはじめていた
最後に、ロンに気づかれない様にラインの姿を思い浮かべた
ロンに背を向けて、服を着る
行為が終れば先程までの様に媚びる必要もない
それが分かっているのか、ロンも交わっている時以外は素っ気無い態度だった
ロンの家は水浴びも出来るので、既に僕の身体は綺麗な状態に戻っていた
戻ったとはいえ、散々犯されて寝かされた身体にはロンの香りは色濃く残る
「もう帰るのか?」
立ち上がったところで呼び止められる
「早く帰らないと、ラインが拗ねるから」
それを聞いて、珍しく苦笑いをロンは零していた
相変わらず互いに会うのを避けている様で、関係は微妙だった
その間に挟まれて二人の相手をしているのだから、立場としては悪いはずなのに
問題無く話せているのが何だか不思議に感じられた
「・・・薬のこと、感謝している」
寝床の上で、僕とは違い全裸で汚れたままのロンが起き上がり礼を言った
何も言わないけれど僕が水浴びを済ませるまで待っていたのだろう
一応はあの行為も儀式に当たっていて、その間だけロンも服従させる動きを取っていた
「いいよ、本当に偶然だったんだし」
長く様子を見たが、症状が戻る事もなく大丈夫なのだという
村の中ではちょっとした噂になっていた
其処まで知られて、信頼されていてもロンの香りが無ければ森の奥に行けないというのが少しだけ歯痒い
「資料作りは順調か?」
話題を変えるためなのか、今度はそう切り出された
その返事に僕は詰まってしまう
見透かした様に、軽く笑い声を出すとロンが立ち上がる
「安心しろ、別にお前の資料を破るなんてことはもうしないさ」
目の前にやってきたその肉体を見つめる
屈強な身体は、室内の窓から射し込む光に照らされる
互いに向き合ったままの状態でも交わったせいで、僕の吐き出した精液がその身体を汚してこびり付いていた
それを見て、思わず顔を逸らす
「ラインがお前に執着するのが、何となく分かるぞ」
それだけ言うと、ロンは水浴び場へ行くために僕に背を向けた
「また臭いが欲しければ来い、そう遠くないだろうがな」
僕の動きも確かめずにロンは消えてしまう
僕は少し戸惑ってしまった
資料を破り、僕を嘲笑っていたあのロンとは別人だった
それが本当の姿なのかも知れない、ラインと親友だった本当の姿
その親友の姿すら、ラインの前から奪ってしまった
また、後悔が生まれた
僕が住処へ戻ると、ラインは直ぐに出迎えてくれた
早速ロンの存在を確かめたのか強く抱き締められる
日も暮れかけていてラインの仕事もそろそろ終わりなのだろう
何も言わずにラインと一緒に穴の中へ戻ると、直ぐにラインは僕を押し倒していた
「ウガアァァッ!!!」
ラインの絶叫が、壁に反響して耳に届く
それと同時にラインは絶頂を迎えて精液を吐き出した
裸にされた僕の身体に跨り自慰をしていたラインは、僕の身体目掛けて射精を繰り返す
「フーッ、フー・・・ぐぅ・・マグぅ・・・」
怒りを表していた顔が、不意に寂しげになる
僕が体力の限界までロンに犯されていた事を知って、ラインは僕の中に挿入はせずにただ精液を飛ばして匂いをつける事に没頭していた
それでも射精が終ると虚しさに包まれるのか、切なげに僕の名前を呼ぶ
既に三度精液を掛けられた僕は、目の周りを手で拭いながら口元についた精液を舌で取ってそのまま飲み込んでいた
こうしないと、ラインの欲求は満足させられずに爆発してしまう
「マグッ、マグ・・・・」
その身体が落ちて僕の身体を抱き締める
ぶつかった瞬間に間に挟まれた液体が派手な音を立てていた
何度も僕の名前を呼びながら、ラインの萎える事を知らない陰茎が擦り付けられる
時折唸り声が聞こえるのは、挿入したくて堪らないのだろう
何時もはそれを当然の権利として、ただ無造作に突っ込んでは中で果てているのだから当たり前かも知れない
それでも、今は僕の身体を考えて懸命に抑えている
実際、一度体験したから分かるがロンの後にラインの相手となっては五分も持たずに失神してしまう
ロンとの交わりでかなりの射精をした後では、身体には痛みにしかならなかった
でも、胸の上で未だに悲しい声を上げるラインを見ると流石に僕もどうにかしなければと考えてしまう
視線を逸らした先に見えた物で、一つの考えが浮かんだ
「ライン、起きて」
僕からの言葉に、ラインは飛び起きる
僕から求めてきたのだと思ったのだろう、血管の絡みついた陰茎は何度もびくつき涎を垂らしていた
それに思わず心が揺れるけれど、残念ながら挿入はさせてあげられない
しかしそれに似た気分なら味あわせてあげられると、手を伸ばしてある物を取った
取りだしたのはあの媚薬効果のある壺だった
定期的に使っているので中身はほとんど残っていなくて、これが最後になるのだろう
手に全て掬い取ると、唾液を吐き出して混ぜ合わせた
直ぐに卑猥な音に合わせて手の中に粘液が生まれる
粘液を充分に集めると、片手を伸ばしてラインの砲身に触れて一気に扱いた
「ウゥゥゥ!!」
唸り声が届く、口元は快楽で笑っていて豪快にラインは尻尾を振っていた
その性行為に置いても何時もと変わらぬ明るさが、僕はラインのいいところだと思う
僕の手の動きに合わせて腰を振っていて、嫌らしい音が響き渡った
「ライン、ごめんね・・・入れるのは駄目だけど」
扱きながら僕が言うと、ラインは少し残念そうな顔になった
充分にライン自身が粘液に包まれると、僕は自分の股の周りに残りを全て塗る
それが済んだら、仰向けになってから身体を横にしてラインに見せつける
「ここなら・・いいよ」
股の部分を軽く開けて、言葉を口にする
待ち望んでいるかの様に粘液が糸を引いていた
「ウオオオオォォンッッッ!!!」
勝ち誇った声を上げてラインが射精した
股の間に何度も出し入れした後に強く打ちつけると、先端の部分が飛び出して其処から吐精する
ラインの動きに耐えながら僕はその様子を観察した
僕の身体の中で果てる時、こんな風に脈打つのかと股を少し開いて観察する
股の摩擦でイかせる事をラインに提案すると、最初の内は経験が無いからか
戸惑ったり、何時も受け入れている肛門に挿入しようとしていたけれど
しっかりと教えてあげるとその快感に気づいたのか、ラインは素股だけで更に二回射精していた
元々、僕がロンと交わるために数日禁欲をしたのだから
自慰に其処まで執着の無いラインも当然数日は射精をしておらず、相当溜まっているのだろう
ロンと僕の様に前から射精の快感を知っていた訳ではないから、ラインはかなり我慢していた様で
股の一番奥で射精して僕の腹に掛けたり、亀頭を露出せずに射精して中出しの様な感覚を楽しんでいて
何時の間にか僕の身体は全身が白く、異臭に包まれていた
流石に疲れきったのか、力の抜けたその身体が覆い被さる
「マグ・・・・好きだ」
唇を合わせて、腰を振りながらラインが言う
この頃ロンの事でラインとは獣の様に交わってばかりで、そう言われるのは久しぶりだった
「ライン、ごめんね・・」
「謝る・・な、うぅ・・」
ロンとあれだけ激しく交わった後に、そんな事を言われると申し訳なくなった
謝罪の言葉を言われるのがラインは苦手なのは知っていて、それでも言うと言葉を遮られる
ラインが手を伸ばすと、僕の性器を包み込んだ
長い間刺激を与えなかったせいで鈴口から溢れた液体がラインの手に絡みつく
扱かれると、痛みが走って僕は軽く顔を顰める
「マグ、イってくれ・・・マグ・・・・」
腰の速度を上げながらラインは言う
一度も僕をイかせられないのが嫌なのだろう、痛みを感じながらも僕も必死に射精しようとした
媚薬のおかげか、直ぐに熱い感覚が広がり身体が火照る
「あっ、ライン、イく!ひっ!!」
「マグ!マグ!!!おおぉぉ!!!」
互いに名前を呼んでから、絶頂に達した
痙攣がまるで繋がり合っているかの様な感覚に、僕は興奮を覚える
傷みは更に強くなったけれど、それ以上にラインとこの感覚を共有していられることが嬉しかった
六度の射精を終えると、糸の切れた人形の様にラインは動かなくなる
生きているのは、合わせた胸から伝わってくる音が教えてくれた
眠りはじめたのだろう、その頬を何度も撫でて僕も意識を手放しはじめる
起きたら二人で湖に行こうと、朝の予定を決めた辺りで全てが止まった
重い身体を僕は起こした
重いのは身体だけじゃなく、瞼もそうだった
ラインとの激しい交わりで、身体にあるロンの香りは早くも消えかけているのだ
仕事で出られないラインを一人にして森の奥に行く日々が続いていた
ラインもそれを覚悟で僕に匂いを付けたのだろうけど、やはり一人では寂しいのか
僕が帰ると、結局また直ぐに抱かれる事が多かった
それでも僕は何も言わない、悪いとするのなら此処の住人に生まれなかった僕が悪いのだろうから
森の奥での収穫はラインが居ない事で何時もよりは少ないけれど、あの花の根をまた持ち帰る事が出来た
何時また必要になるか分からないからどうしても採集して置きたかったのだ
一日中駆けずり回って、帰ればラインの相手をする
身体はボロボロだけど、ロンの香りが消えるまでこれは続けなければいけなかった
何時もの穴蔵を見渡すと、視界にラインの姿が見える
丁度ラインも起きたところなのだろう、朝の挨拶をした
いや、した様な気がした
寝惚けているのだろうか、今は上手くラインの言葉が聞き取れない
朝日を浴びればどうにかなるだろうと、僕は外に歩き出した
太陽の光が目に眩しい、頭がすっきりとするのを感じる
今日もまた森の奥に行けそうだ、その前に振り返ってラインに挨拶をしよう
「マグ!!!!!」
ラインが叫んでいた、やっぱり挨拶をしていなかったのだろうか
足場が崩れる様な、そんな感覚を覚えた
眠っていた様だった
重かった瞼がさっきよりも楽になって、目を覚ます
僕の身体にはラインの手が添えられていた
夢だったのかと、その手を握り起き上がろうとする
横にずらした手が、力無く落ちた
僕は何をしているのだろう、穴倉の中に居るのならこんなに明るいはずがない
でも、ラインは今此処に居て僕の身体を抱き締めてくれていた
「ライン?」
僕を抱き締めていたラインを見た
瞳を閉じて眠っている様だったけれど、直ぐに僕は異常に気が付いた
身体を寝かせた大地が赤く染まっていて、ラインは動かなくなっていた