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ヨコアナ
5.誰かのにおい
肌寒さを感じて、目を開いた
起き上がると大きく欠伸をする
何時もならラインが身体を寄せてくれているからとても温かいのに
見渡しても、ラインは居なかった
「今日、見張りだっけ・・?」
陽は高く昇っているみたいで、昨夜ずっと資料作りに追われていたせいで
起きるのが遅くなってしまったのだろう
ラインには、結局何も言わなかった
それでも僕がまだ此処に居て、調べたい事があると言ったからなのか
何時も通りに空いた時間は森を案内してくれていた
朝の空気を堪能していると、ふと物音がして
耳を澄ますために閉じていた目をまた開くと、影がふたつ見えた
「マグ」
後ろに光を背負っているその声はラインのもので
その隣には、前に一度見た事のある虎人が居た
僕の顔を見て顔を綻ばせるラインとは違って
表情は、何も表わしてはいなかった
居住まいを僕は正した
その前で、さっきからやってきた相手の説明がされている
それを頑張って聞こうと努力はしているけれど、ラインの言葉は上手く聞き取れなくて
遅々として伝達は進んでいなかった
「・・・・・もういい」
黙っていた虎人が口を挟んだ
ラインの動きが一度固まると、残念そうに耳を下げる
その頭を僕が撫でた
「族長の息子のロンだ、前に一度会った事があるだろう」
はきはきとした様子で、自己紹介をロンがした
それに僕か驚く
だって、ラインだけじゃなく集落の住人は大抵は聞き取れない言葉で話す事が多いのだ
ラインに案内されて初めて族長と会話した時でさえ時々分からない事があったのに
その息子だと言うロンの言葉は、たったそれだけの言葉でも町で聞く声の調子と変わらないのが分かった
僕の驚く様子にやっとその顔が表情を作る
何かを考えている顔だった
それでも直ぐに答えを導き出したのか、また無表情になった
「・・語学の勉強はしている」
「はあ・・・」
短く言われて、僕も短く返事をする
何時も見ているラインは愛情表現が盛んで、伝わらない言葉でも懸命に伝えようと努力してくれるから
それとは対照的なロンの様子に戸惑ってしまう
そのまま、ロンは説明を始めてくれた
森を観察していると、部外者の僕が入れない土地がある
其処に入るために必要な手続きを態々丁寧に伝えに来てくれたのだ
ロンの口が動く度にその隣でラインが何度も頷く
多分、よく分かっていないだろう
説明を終えると、ロンがひとつ息を吐いた
此処まで発した言葉は全てはっきりと聞き取れていて
町に居た頃はそれが当たり前だったはずなのに
思わず尊敬の眼差しを向けてしまっていた
ロンの紹介と説明が済むと、ラインが待ってましたと言わんばかりに喋り始める
ラインの聞き取りにくい言葉にロンが細かく聞き取れる言葉で突っ込んでいて
妙な空気が生まれていた
年齢も近い様に見えるから、幼い頃から仲が良いのだろう
何かを話しながらも、時折僕をロンが見る
それに、居心地の悪さを感じていた
僕を見る時は少し目が鋭くなる
集落で族長に挨拶したその場にロンも居て
その時も、僕を厳しい目で見つめていた
僕が何のために町から来たのか、集落の住人なら知らない者はいない
話を聞くと、族長の息子だからこういった事にも駆り出されている様で
ロンは僕のする事に賛成的じゃないという事なのだろうか
「マグ、大丈夫か?」
僕の表情が曇っているのに気付いたのか、ラインがじゃれ付いてくる
それに恥ずかしさを覚えた
目の前にロンが居るのに、ラインは何時もみたいに抱き締めようとする
「ところで・・・」
僕がラインから逃れようと暴れ出した頃に、ロンの低い声が穴蔵に響く
族長の息子という立場からか、ロンの邪魔をするのはいけない事だとラインは心得ているのか
それでラインが一度離れた
「調査はどの程度進んでいるんだ?」
僕がどの程度の調査を済ませたのか、気にしているのだろうか
立ち上がると、僕は鞄の所まで行って中から資料を取り出した
あれから更に調べは進んで束の厚みは増していて
もう少ししたら一纏めにして新しい束を作るところだった
資料の束をロンが見つめる
その瞳が、僅かに光った様な気がした
ロンの身体が近づいてくる
思わず、後退りをした
「ロン・・?」
一人座っているラインが不思議そうに名前を呼んだ
僕がその事に気を取られた次の瞬間、身体に鈍い痛みが走った
僕の懐に飛び込んだロンが、持っていた資料を奪うと
そのまま僕の身体を腕で払ったのだった
払われて、身体が床に強打する間際に
ラインが何とか傍に寄って受け止めてくれた
「マグ!!」
突然視界が回転した事で頭の回らない僕の事を心配そうにラインが見つめる
それよりも、僕はロンが奪った資料が気になっていた
身体をどうにか起き上がらせて見ると
穴蔵の入口に、ロンが立っていた
紙の束が揺れた
持っているロンが、手を振ったのだろう
その表情は、僕を蔑む様に見ていた
次には資料を見ると憎らしく思っているのがよく分かる顔になる
「こんな物があるから・・・」
嫌な予感がした
慌てて立ち上がろうとした時だった
ロンが束を両手で半分ずつ掴むと、直ぐ後に破れる音が響き渡る
「あ・・」
思わず出た僕の声だった
そうしている間にも、二つに裂かれた束はまた裂かれて四つになる
それが終わると勢い良く外に向かってロンは紙くずを投げ捨てた
穴の中でも幾つか紙が舞って、外に辿り着いた紙は風に乗って飛んでゆく
身体中から力が抜けて僕はそれを呆然と見ている事しか出来なかった
涙が出そうな気がしたのに、待っても出てきてくれない
大分資料が外に出て行った後にロンが振り返って僕を見た
自分がどんな顔をしているのか分からなかったけれど
少なくとも、僕の顔を見たロンは満足気だった
ロンの身体が、壁の方へ吹き飛んだ
俯きかけていた顔をどうにか上げると、握り拳を作ったまま唸るラインが居て
たった今ロンを殴り飛ばした様だった
殴られたロンは最初、目を見開いたまま動かずラインを見ていた
殴り飛ばされるとは思わなかったのだろう
それでも直ぐに怒りを表情に表すと、凄い剣幕で捲くし立て始める
その口から発せられる言葉は今まで口にしていた聞き取れる言葉とは違って、ラインと似た様な言葉だった
上手く聞き取れなくても何を言っているのかは状況で分かるのだけれど
「・・・どうしてこんな奴を庇う!?」
最後に、僕を見てロンが怒鳴った
町から来た僕を、やはり良く思ってはいないのだろう
それを聞いてラインも僕を見て一度難しい顔をしていた
ラインだって、僕が何をしているのか分かっているはずだ
それでも、ロンの言う事を無視してまだ近くにある紙を拾い集めていた
それをロンが止めようとしても、睨みを利かせて近づかせない
集められるだけ集めた紙を僕の元に持ってきてから渡す
もう飛ばない様に、しっかりと僕はそれを手で押さえた
「マグの大切な物だ」
振り返ったラインが言った
ラインの真っ直ぐな言い方に、ロンは一度視線を逸らす
少しして僕を見ると、舌打ちをしてから殴られた所を手で拭って走ると穴蔵から出て行った
それを見送ると、ラインは僕の身体を一度抱き締める
何時の間にか身体が震えていた
当たり前なのかも知れない、数ヶ月の間没頭して集めた資料だったのだから
抱いていた腕の力を緩めてラインが離れると視線を合わせた
ラインが頷くと、立ち上がって外に向かう
何時も見張りをしている場所からラインが飛び降りて姿を消した
ロンを追うのではない
風に乗って飛んでいった資料を探しに行ったのだろう
ラインも穴蔵から出て行くと、手元に残った資料の破片を見つめた
絵が、無くなっていた
夕陽が射し込んだ
その光を頼りに、手元にある紙切れを合わせて資料を復元してゆく
一枚の資料として元に戻る物もあれば、欠けてしまって意味を成さない物もあった
大半は飛んでいってしまって前後の資料がどうだったのかもよく分からなくて
せっかく残ったというのに書き直した方がいい気さえしてしまう
それでも、あの膨大な量の全てを思い出すなんて事は不可能で
朧げに蘇る記憶の数々は、とても信頼できそうになかった
途方に暮れていると、突然夕日の光が遮られる
現れた大きな影は入口に立っているラインの物だった
互いに何も言わない今は、ラインの荒い息使いだけが何度も耳に届く
覚束ない足取りで僕の許へ来ると、座り込んでから紙の束を差し出してきた
飛ばされた紙切れは、時間が経てば経つほどに風に飛ばされ無くなってしまう
だからラインは昼の間中走り回っていたのだろう
身体中に細かい傷を作って、胸を上下させる姿が其処にあった
「・・・・・マグ・・・ごめん・・・・・」
言葉を少しずつラインは口にする
差し出された紙の束は、元の資料から考えると半分にも満たなかった
一部が見つかったところで、完全な修復は出来ないのだから役に立つのかさえ僕自身も分からなかった
だから、捜しに出たのは無駄かも知れなかった
ラインもそれは分かっていたのだろう
それでも探しに出掛けてくれた
それに応えたくて、僕は黙ったまま今までと同じ様に資料の修復に取りかかった
予想通り、ほとんどはただのゴミになって元に戻ったのは数枚程度だった
元に戻った一枚を黙って見つめる
その紙に、雫がひとつ落ちた
それを見て僕は慌てて腕で顔を拭った
「ごめん、また汚れちゃうよね・・・」
零れない様に何度も拭っていると、ラインに腕を掴まれる
目が腫れるのを心配しているのだろうというのは、直ぐに分かった
涙が再び零れるよりも先に、ラインが腕の中へと僕を避難させる
堪えていた涙が漸く溢れてきてくれた
「また、描いてくれ」
僕の描いた絵は、見つからなかった
腹の辺りを撫でられる感触がした
薄く目を開くと、ラインが優しく僕を見つめてくれていた
「行って来る」
それに頷くと、裸のラインは起き上がってから腰布を巻いて外に歩いて行った
僕の心配をしていない訳ではないのだろうが、何時も通りにしてくれと昨晩の間に頼んだのを忠実に守っているのだろう
見送ると、僕も起き上がって大きく伸びをした
視界の隅にちらつく机の上には無残な紙切れが残っていて
昨日の出来事が夢でないことを如実に物語ってくれていた
溜め息を一度吐く
それでも、昨日程の落ち込みは襲ってこなかった
布団を退けると僕も服に袖を通す
随分長い間此処に居たからか、袖を通すといっても着ているのは村人の服に似ていた
ゆっくり歩いて外に出ると、眩しさに視界が奪われる
数秒待ってから見た世界に、ラインは居なかった
「随分寝ちゃってたんだな・・・」
今日のラインは朝から昼に掛けてが見張りで、その後は村の集会に出る予定だった
先程声を掛けてきたのは正に集会に向かう直前だったのだろう
当然部外者の僕には無関係の事なので、ラインが帰ってくるまでは暇を持て余す事になる
振り返り穴の中に戻ると、何も書かれていない紙を取り出した
気持ちが暗くならないのは、昨夜布団の中で僕を抱き締めながら
また資料を作ろうと、ラインの方から切り出してくれたからだった
ラインだって、ロンの様子を見て僕の作っている資料に疑問を感じているはずだ
それなのに、やはりその事には一切触れずにいてくれた
資料を作る事が僕自身にも必要なのかが分からなくなりかけていたけれど、その気持ちに押されて僕もまた作ろうという気持ちになれた
だから、ラインが帰ってきたら直ぐにでも取りかかれる様にしたい
今思い、行動に移すことが出来るのはそれだけだった
必要な紙とペンを用意し終えると、ラインの帰りが待ち遠しくなる
帰ってくるのは夜で、準備を済ませた今も外はまだ少しだけ明るかった
掃除でもしておこうかと、視線を戻そうとした時
不意に、見えるはずのない人影が入口に現れた
集会が早く終わったラインが帰ってきたのだろうかともう一度顔を向けると
入口に、あのロンの姿があった
突然の来訪に、僕は言葉を失った
当のロンは昨日初めて会ったあの時の様に、無表情を貫いて僕をただ見つめていた
その足が一歩踏み出される
反射的に、僕は後退りをした
ラインが今集会で居ない事を、ロンは当然知っているはずだ
それを狙って態々やってきたのだろう
視線が僕から逸らされると、次には机に向けられる
慌てて、僕は机の前に立った
机の上の白紙が見つかるのならまだいい、直ぐ近くに修復した資料があるのだ
それが見つかっては、今度こそ全てを捨てられてしまうだろう
ロンが僕の目の前へと歩み寄る
「昨日はすまなかった」
覚悟を決めた僕の耳に聞こえた言葉は、それだった
突然の事に、言葉が理解出来ず僕は固まる
「今日は、昨日の事を詫びにきた」
そう言われて、数秒置いてから僕はロンを睨むように見つめた
全ての資料を破っておいてそんなことを言うのだから
争いが嫌いな僕でも、その言葉には不快感を覚えた
僕が思っている事をロンはよく理解しているのだろう
僕の睨みも黙ったまま受け止めて佇んでいた
「帰ってから、族長にお前の事を問い質してみた」
族長、つまりは自分の父親と話をしたのだろう
何故僕を此処に置いておくのか、ロンの疑問はそれ一つのはずだ
「族長は何も言わなかった、俺が資料を破り捨てた事も・・ただ、お前の手伝いをする様にともう一度言われた」
直後に、ロンが溜め息を吐く
「何故お前を受け入れるのか、俺には理解出来ない・・・族長も、ラインも」
ラインに殴られた事がロンの中では余りにも大きな衝撃となったのか
無表情だった顔が、今は途方に暮れている様に見えた
それでも顔を上げると、腰の辺りに手を伸ばし服の中に突っ込むと暫くしてからペンダントの様なものをロンは取り出した
「だが、今は二人の言う通りにしてやろう」
差し出されたペンダントを僕は受け取る
この辺りで採れた鉱石を使っているのだろう、この洞窟と同じ様に掌で包むと淡く光を発しているのが分かった
「これは村人の証だ、これを持っている事が皆に知られればそれでお前は村人という事になる」
「村人・・・」
つまり、これでラインと同じになったという事になる
そう考えると嬉しさが込み上げてきた
ラインと一緒に歩いていても、僕は常に余所者という視線を浴びてきたし
僕自身もそうだと思っていたのだから
「それなら、これで入れない所にも・・・・」
「いや、それは無理だ」
僕の期待を打ち砕く様に、予想していたのかロンが言葉を遮った
それに驚きながらも僕は動揺する
あの奥に入れなければ、完全な資料を作る事が出来ない
ラインとの約束が早々に無理になるという事だった
流石に、ラインが居るのに無断で侵入するというのも気が引けた
「もし部外者が無闇に入れば、捕まり次第殺される」
追い撃ちを掛けるようにロンが続けた
今度は、僕が溜め息を吐いた
掌にあるペンダントを握り締める
結局、村人の証を貰ったというだけに終わってしまうのだろうか
森の奥に入れなければ、結局何をしたって資料なんて完成する訳がないのに
そう考えると、喜んでいたはずなのに今度は落ち込んだ気分になってきていた
帰ってくるラインになんと言えばいいだろうか、その心配が頭を過った頃だった
突然、ロンが僕の腕を引くと胸元へと引き寄せる
「言ったはずだ、俺はお前を森の奥に連れていく事に協力すると」
そのまま、噛みつく様に唇を合わせられた
動きの早さに戸惑っていた僕は慌てて暴れ始める
それを察知するとロンは僕を突き飛ばし、突き飛ばされた身体は布団の上に倒れた
「これが答えだ」
口周りについた唾液を腕で拭ってから、ロンはやはり無表情でそう言った
身に着けている服を、ロンは脱いでゆく
族長の息子に相応しい豪華な物で
その下にある身体はラインよりも更に引き締まっていた
普段は監視役として働くラインとは違い、ロンは率先して狩りに出て先導をしているのだろう
上半身を曝け出すと、僕の目の前でその身体が座り込んだ
「森の奥に行けるのは位の高い者だ・・・族長の息子である俺を咎める者は居ない」
その間にも、僕は上半身だけでも起き上がらせると必死に下がり始めていた
そんな事で逃げられないことは分かっていても、これからされる事を理解して本能的に身体が動いてしまうのだ
「だが、例え位が低く余所者であったとしてもそれが、位の高い者の寵愛を受ける人物だったら話は別だ」
逃げようとした身体の足首を掴まれて、引き寄せられる
「お前の身体から、俺の臭いがすればいい・・それは、強ければ強い程効果を表す」
僕の身体を逃がさない様に
これからすることをはっきり分からせる様に
覆い被さったロンは耳元でそう囁いていた
「今から、犯してやる」
それで、恐れていた現実が始まった
ロンの動きは性急だった
僕が暴れている間は動きを止めようと押さえつけ、身体を擦り合わせて臭いを移していて
動きが弱まれば、直ぐに僕をうつ伏せの体制にして背中を押し動けない様に固定されていた
着ていた服は既に剥ぎ取られ、下着代わりにつけていた物だけが一枚の状態で
こんな格好をさせられている事が酷く羞恥心を煽っていた
最後の一枚に手を掛けると、何の躊躇いも見せずにロンはそれを脱がせた
「・・・見ないで・・」
顔が今までに無い程熱くなるのを感じた
そんな格好を、ラインの前でもした事がなかった
それでもロンは僕の様子を楽しむ訳でもなく、変わらず事を進めてくれる
それが今は嬉しい気もしたが、先に進んで欲しくないというのもあって複雑な気分だった
肛門を、ロンは迷いなく舌で大きく舐め上げた
「いひっ!?」
後ろがほとんど見えない僕は、その唐突な刺激に情けない声を上げた
加えて、ざらついたロンの舌はラインに舐められるのとはまた違った刺激があり
それに慣れていない僕は、続け様にやってきた感触にも息を荒くしながら短く声を出していた
ラインとの交わりのせいで、既に身体は男を受け入れる事になれてしまっていて
それが今は憎らしく感じられた
「あぁ・・・・や・・」
大きく舐め上げられる度に、身体を震わせながら悶えた
ロンが顔を埋めているところからは際限無く水の音がしていて、心がざわつく
既に僕の脚の間では、大きくなった性器が涎を垂らしていた
舌を入れながら指も軽く入れられる頃になると、喘ぎが強くなり段々と思考が遠退いてゆく
ラインは、僕がこんなことになると知っていたのだろうか
ロンを連れてきたのはラインだ、それでもラインが僕の身体をロンに差し出すとは到底思えなかった
今からでも、この行為を拒むべきなのかも知れない
「あうぅ!!」
そう思ってみても、ロンが深く指を突き刺し前立腺を刺激すると情けない声を出すと共に考えても外へ出て行ってしまった
ロンが指を引き抜く
ざらついた舌の感触になれた其処は、刺激が恋しくて無意識にロンを求めていた
執拗に責めていた虎の身体が起き上がる
下半身に手を伸ばすと、全てを脱ぐのではなく前を寛げる様に服を脱いでいた
視線を後ろに向けると、ロンの掌に収まっている凶器が目に留まる
それに、ロンは大量の唾液を吐き出すと満足そうに塗りつけていた
赤黒いそれは、天を仰ぐと何度も震えながら存在を主張していた
流石のロンもこの刺激には我慢出来ないのだろうか、荒い息使いが聞こえてくる
その後直ぐに、押しつける様に肛門にロンの亀頭が宛がわれた
一拍置いてから、ずぶりとロンが侵入してくる
「あああっ!!」
激痛が走って、僕は叫び声を上げた
それに気づいてロンは動きを止めてくれる
何時もと違っていた
何が違うのか、考えて直ぐに答えが出る
ラインに散々貫かれているのだから、今更受け入れる事が辛いのではない
ただ、何時も受け入れているラインの雄よりもロンの方が太かったのだ
慣らされていない大きさに、身体が初めての頃の様に悲鳴を上げていた
「あぁっ・・・う・・や、抜いて・・」
上手く言葉を発せずに、どうにかそれだけを僕は口にする
「駄目・・だ・・・・俺には時間がない・・」
ロンも族長の息子として、するべき事は多かったのだろう
今を逃してしまえば、当分はこの機会は訪れない
何より、一度血の滾った肉の塊を満足させずに抜くつもりもなかった
そうロンは判断したのか、徐々に腰を推し進め始める
「ひっ、痛い・・やだ・・・うああっ!」
泣きながら、僕は逃げようとするが肩を掴まれるとそれも許されなくなった
叫びを無視したロンはどんどん肉を僕の中に挿入してゆく
直腸の中を、太い性器が押し広げる
その感覚に、声を無くした
軽い咳の様なものが口から飛び出す
全てを入れ終わると、漸くロンの動きが止まった
身体の中で、ロンの性器が震えているのが伝わってきた
ロンが力を入れる度に、中にあるものは嬉しそうに跳ね上がり刺激を与えてくる
それに声を上げて泣きながら、僕もロンを締め上げていた
「あっ・・ああぁぁ・・・・・」
少しずつロンの雄が引き抜かれてゆく
入口まで戻ったところで、今度はそれが激しく突き出された
「ひぃっ!!」
僕の悲鳴を楽しむ様に、それを聞いたロンは軽快に腰を振り出した
結合部からの音に合わせる様に僕の口からも悲鳴が続く
突然、ロンが僕の尻尾を強く握った
「うっ・・・・」
千切れそうなその痛みに、慌てて腰を近づける
そこに狙い澄ましたかのようにロンは腰を打ちつけた
また、悲鳴が出た
尻尾を引かれる度にその痛みに耐え兼ねてロンの方へと腰を近づける
何時の間にか、ロンだけが動きを止めていて
無意識に身体を動かしている僕は、まるでロンを心から求めている様に傍からは見えるのだろう
それでも、ロンが身体の中へと入ってきた時の圧迫感
僅かに動くだけでも生まれる衝撃は計り知れないものだった
「あぁ!い、いく!!!イクッ!!」
泣きながら、ロンに突かれて僕は射精をした
出したばかりの精液をロンは手に取ると、舐め取ったり僕の腰に塗りたくったりを繰り返していた
その内、ロンの身体が覆い被さり身体を擦り合わせ始める
擦り合わせながらも、僕の首筋を軽く噛みながら涎を垂らしていた
臭いをつけるという本来の目的を見失ってはいないのだろう
ロンの動きが激しくなる
射精の満足感に夢中になっていた僕は、ただ小さく喘いでいるだけだった
無言のまま、ロンの動きが突然止まった
微かに堪え切れなかったのか快楽に満ちた声が耳元に届くのと同時に、身体の中に精液が溢れ出してくるのが分かる
元々ロンの肉だけで充分に満たされている中は、吐き出された液体で更に広げられ
僕はただ呻いて、達したばかりなのに再び勃起していた自身を満足させるために軽く腰を振る事に夢中になっていた
其処から、段々と記憶は薄くなってゆく
最後に見たのは、正面からも臭いをつけようと僕を仰向けにして
僕の身体を抱き締めながら目を瞑り快楽に喘いでいる初めて見るロンの表情だった
呻き声が聞こえて、目を覚ました
僕から出た声だった
起き上がって見た洞窟の中は、既に陽も沈み視界は悪かったけれど
何時もと何も変わらない様子を表していた
夢だったのかと思ってしまいそうだったが
僕自身には、ロンの痕跡が嫌という程に残されていた
指を下半身に伸ばす
穴を探り当てると、指を入れた
入れると同時に中から粘り気のある液体が溢れてきて、指があっさりと入る
ロンの放った大量の精液だと理解すると、僕は立ち上がって布団を乱雑に身に纏ってから外に出た
何時もラインが見張っている崖から下を見下ろす
村の方角から微かに煙が上がっていて、まだ集会が続いているのが直ぐに理解出来た
ラインがこの場に居ないなら、あそこにまだ居るという事だ
それも頭に叩き込むと、痛む身体を叱咤しながら僕は必死に走った
山を降りると裏にある湖へと足を進める
湖に着いた頃には、息も上がっていて
布団を投げ捨てると、そのまま湖の中へと倒れ込んだ
水の跳ねる大きな音が微かに聞こえても、その次には僕の耳も水の中へと入ってしまいそれを遮断してしまう
暗闇しか見えない湖の中に、このまま沈んでいきたい感覚に囚われた
そう思ってみても、十数秒もすれば息苦しくなって散々もがいてから水面に顔を飛び出させる
毛先から幾つも雫が落ちて湖に新しい波紋を作っては消えてを繰り返す
空に浮かんだ月に、身体が照らされていた
僕の周りの水だけが少し濁っている
ロンの臭いを受けるために、直腸に吐き出された後は身体全体に向かって精液を掛けられたのだろう
掻き毟る様に身体中に手を這わせた
こんなことをしても意味が無いのは分かっているけれど、腕は自然に動いていた
気が済むまでそうしてから、腕を下ろして水の中に入れる
水に手が浸かると同時に抜け落ちた体毛が何本も広がって浮かんでくるのを黙って僕は見つめた
「・・・帰ろう・・」
何時ラインが帰ってくるのか分からない
僕に出来るのは、ラインが帰ってくることを待つだけだ
こんな時間に僕一人で外に出ていたら、ラインは心配するだろう
だから、今は帰ろう
それだけを考えて、手早く身体を洗うと湖から身体引き上げた
捨てていた布団を取りそれで身体を拭くと、傍の木に丁寧に干した
替えの布団がまだ穴倉にあるから、困る事はない
身を隠す物が無いけれど、ラインとの生活に慣れた今の僕は何とも思わずに裸のまま道を歩いて行った
帰ってから心を落ち着かせていた頃に、ラインも集会から戻ってきた
「マグ、ただいま!」
最初は何時もの様に嬉しそうな顔をして、僕もそれに応えたけれど
僕の身体を抱き締めた途端に、少し不思議そうな顔をしていた
「ロンの臭い・・・」
何度か僕の身体の臭いをラインは嗅ぎ取る
その内に、眉間に皺を一度寄せた
ロンの精液を嗅ぎ取ったのだろう、次には僕の顔を寂しそうに見つめていた
自分が抱いている相手から別の相手の臭いがすると、そう感じるものなのだろうか
都会から来て人の臭いを気にしなくなった僕にはそれがよく分からなかった
「・・・・ロンが、森の奥にも入れるようにって」
ラインは説明を求めている様で僕は短くそれだけを言った
一度目を丸くした後、ラインに強く抱き締められる
「・・・マグ、ごめん・・」
言いながら、頬を僕に擦り付けてきた
様子から見て、ラインもロンが何をするかまでは知らなかったのだろう
それに、僕は少しだけ嬉しい気持ちになった
僕からも腕を回してラインと抱き合う
「・・ライン、匂いつけて・・・ラインの匂い」
それに、ラインは黙って頷いてくれた
ラインの匂いが僕に戻れば、僕は再びロンの臭いを求める事になるのだろう
それでも、僕は今ラインがただ欲しかった