ヨコアナ
1.欲求不満
青空の下よりは明るさの足りない洞窟の中に、ペンを走らせている音が響いて耳に届いた
見下ろしている紙に僕は熱心に文字を書き込んでいて
不意に、頬に息がかかる
その次に、押し殺した様な声がした
「・・後にして」
頬に寄せられる唇に、僕はそう言った
それでほんの少しの間だけ何も起きなかったのだけど
「・・・・・・マグ!」
次の瞬間には声と一緒に視界が一気に回転して鈍痛を感じた
頭を盛大に打って、僕は呻き声を漏らした
涙目になりながらも目を開けば目の前には僕の身体に頬擦りをする狼人が居て
その向こう側の尻尾が何度も揺れていた
それを見て溜め息を吐いてから起き上がろうと身体に力を入れる
「ライン、退いて」
起き上がると同時に名前を読んだ
言われた事を理解したのか、狼人のラインは直ぐに身体を引いてくれた
身体を引いても、名残惜しいのか僕の足の上にその手が置いてあって
漸く起き上がれた僕はそれをやんわり退けてから一緒に床に落ちた紙を拾い上げる
紙についた汚れを払うと書く事を再開した
「マグ、まだなのか?」
ラインが僕の名前を呼んで問い掛けてくる
「まだ」
短く返事をするのは少しだけ怒っているからで
何となくそんな空気を感じ取ったのか、尻尾を揺らすのを止めるとラインは隣で座っていた
静かに文字が書けると、僕は喜んでペンを走らせていたのだが
真横から感じられるもの悲しい視線を感じて横目で見つめる
目が合うと直ぐに逸らしたが、それが何時まで経っても気になってしまっていて
結局、二回目の溜め息を吐くと手を伸ばしてその頭を撫でた
そうしてあげると、すごく嬉しそうな顔をしてくれるから
何時の時も邪魔をされるが、然程気にしていない僕がいた
今居る場所は、大きな森の中にある岩山の洞窟の中で
今目の前で頭を撫でられて心底嬉しく、そして忙しなく尻尾を振っているラインの家だった
「マグー・・」
これ以上無いほど幸せそうにラインが僕を呼んだ
振られている尻尾は、犬人の僕よりも狼の方が長いのか土煙さえ上げかけている
その身体に身につけているのは腰布一枚で目のやり場に困ってしまうのだが
それは最初の数日で慣れた
僕が此処に居るのは、簡単に言えば森の調査人だからだった
元々僕は開発の比較的進んだ町に住んで、進化する文明に感動をしながら生活をしていたのだが
その進化する文明が次に目をつけたのがこの森だった
まだ未開発のこの場所を僕が住んでいる町に一歩でも近づける様な場所にする
そして、それが可能なのかどうかを調査するのが僕の仕事だった
はっきり言えば最初は行くのに反対だった
何が面白くてこんな何も無い所に僕が行かなくちゃいけないのか
此処に来るまでの道で何度も何度も呟いた言葉だった
でも、そう思っていた僕の思いは簡単に打ち砕かれてしまった
道に迷い、今にも倒れそうな僕の前に
上から木の葉を掻き分ける音を激しく立てながら現れたのが目の前に居るラインだった
初めて会ったこの森の住人に僕は混乱した
唸り声を上げながら見つめるその凶相を見た瞬間
獲物にされる者の恐怖と、胸の高鳴りを同時に感じた
その場はどうにか言葉が通じたので近くの集落まで案内をされ
集落の長に僕は事情を話したのだが、やはり外からの文明の介入には警戒を示しているのか
全てが受け入れられる事はなかったけれど、集落やその周りを調査する許しは貰う事が出来た
そして、そんな調査人の僕の世話を言いつけられたのもラインで
僕はこの穴蔵生活を始める事になったのだった
ラインの仕事は監視人だった
僕を見つけて威嚇したのも、その仕事だったのだろう
仲間と交代で日を決めて外部からの災いから森を守っているのだと、たどたどしく説明をされた
ラインの話す言葉は決して僕と違う訳ではないのだけれど、訛りが酷くて上手く聞き取れなくて
会話をしていても一部分は聞き取れずに混乱してしまう事があった
「マグ、大丈夫か?」
すっかり考え事に耽っていたせいか
ラインが僕の顔を見つめて難しい顔をしていた
「あ、大丈夫だよごめん」
そう言って止まっていた手を動かすとまた嬉しそうに尻尾を振り始める
僕はラインに一目惚れをしていたのだが、一緒に暮らし始めると
ラインも僕を気に入ってくれたのか今ではこうして抱きついてくる事が多くなった
それは、僕の理性を突き崩すのには充分だったのだけど
自分には自分の仕事があるのだと言い聞かせて必死にそれを抑えていた
「ラインは仕事いいの?」
そう言われて、ラインは一度立ち上がると外へと駆け出す
書きかけの紙を纏めて少し遅れてから僕も外へと出る
眩しい光に視界が埋まって思わず声を上げても、数秒待てば直ぐに治まって綺麗な青空が見えた
新鮮な空気を肺に送り込みながらラインの背中を見つめる
その傍に寄ると、僕は下を見下ろした
どれくらいの距離があるのか、眩暈がしそうな程遠くに足場があって僕は一歩引く
この崖の様な場所からラインは外を監視し、異常があればこの段差を飛び下りる
僕が飛び下りたら、きっと骨折か頭から落ちるだろう
その段差を何段も下りれば漸く大地に立つ事が出来る
因みに僕は下りられないので、横にある道から何時も回り道をしながら此処から出て行かなくてはならない
そんな時のラインは一緒に歩いてくれて、それをしてくれるのが僕は嬉しかった
遠くを見つめるラインの顔を見上げる
何時もは笑った顔ばかりをしているけれど、こうやって警戒をしている時の顔はすごく凛々しい
そして、初めて僕に会った時のあの顔
どの顔も僕は好きだった
異常は見つからなかったのか、身体が振り返る
正面から向き合うとその身体がどれ程逞しいのかを思い知ってしまう
陽の光が当たり、身体の盛り上がりをより鮮明に教えてくれる
それに何時も見惚れてしまうのだ
そして、またひとつラインは笑う
僕も笑うと、並んで洞窟の中へ戻った
夜がやってくる
洞窟の中は暗くて、入口に当たる月の光がとても強く感じられた
それでもこの視界が真っ暗闇にならないのはこの岩山の鉱石が特別なものなのか
こうして僅かでも光が当たるだけで、洞窟全体が淡く光り出す
こんな幻想的な世界でラインと眠るのが、此処に居て一番好きな事だった
でも、少しだけ物足りない事がある
洞窟の入口を見ていた身体を振り返らせる
既に眠る準備をしているのか、ラインはご機嫌な様子で布団代わりの布を整えていた
物足りないのはラインだった
こうして見ていると、まるでこれから僕が抱かれるのではないかと勘繰ってしまうのだけれど
実際はラインは僕の事を抱いたりはしないのだ
それどころか、そんな仕草一つ見せる事が無い
僕に色気がないのだろうかと最初の内は思っていたのだが最近それが違う事に気付いていた
最初に気付いたのは、朝起きた時の事
ラインは既に起きて僕を見つめていて、欠伸を掻きながら僕は布団を退けていた
そしてその時にラインの腰布がはちきれんばかりに膨らんでいるのを見つけてしまったのだ
僕の驚く様子にラインも気付いたのか、その部分に手を伸ばすのだが
やんわりと触れる程度でその顔は不思議な表情を形作っていた
あの事から察するに、要するにラインは何にも知らないままなのではないかという心配が過ぎっていたのだ
そして、多分それは当たっているのだろう
それから何日も共にしてもラインはまったく変わらずにそれを続けていたのだ
此処にずっと居るラインは誰かからそれを教わる事も、自分で知る事もないのか
止めに時々夢精をする事を相談された時に確信してしまっていた
これでは、抱くとか抱かれるとかそんな話に進展するはずもなかった
けれども、僕の方は常日頃からラインの筋骨隆々な身体を堪能していてどうにもその気になってしまう
そんな状態がもうずっと続いていた
「ライン・・・」
思い切って、僕はラインに声を掛けた
「なんだ?・・・・・・・・・」
最初の言葉の後は、上手く聞き取れない
それでも楽しそうに語っているその顔を見れば、何時もの通り明るい事を喋っているのだろう
今は、そんな暢気なラインが少しだけ恨めしかった
傍まで歩み寄ると、僕は布の上に膝で立ってラインにキスをする
唇を合わせながらその背中を撫でた
僕からする事はあまりないので、ラインの尻尾が激しく揺れ動く
ここまで、ここまでは時々交わすやり取りと変わらなかった
「あ・・・・」
ラインの目が見開かれて、次には微かな声が洩れた
股間に手をやって布越しにライン自身を僕が握ったからだった
突然の刺激に重ねられていた唇をラインは引いてしまう
「何だ・・?」
不安そうにラインは僕を見ている、何時もはしない行為だしラインも自分でしたことがないからだ
それでも、背中を撫でると大丈夫だと思ったのかされるがままなのを見て
更にラインの股間を優しく揉みしだく
ラインは戸惑っていたが、それでも若い雄の身体は直ぐに反応を示したのか
何時の間にか呻き声が聞こえ始めていた
手に硬い感触が伝わるとそっと手を引いた
布越しに、ライン自身が充分な大きさを僕に伝えていた
何度も震える自分自身にラインは完全に混乱しているのか
助けを求める様に僕を見ていた
「ライン、大丈夫だよ」
本当に何も知らないんだ、なんて心で思いながらも警戒を解くために言葉を発する
何時もは何かを言うラインなのに、動転していて口を開けたまま何も言えないでいた
再びゆっくりと手を伸ばす
それが腰布に掛けられると取り外す様に引っ張った
「うっ」
ラインが短く声を漏らした
中で布が擦れたのだろう、口を大きく開くと何度も荒く呼吸をしていた
巻きつけられている布を何枚か剥がすと、ラインの陰茎がくっきりと布に浮かび上がってきていた
先端部分に滲みが出来ていて、手を添えると容赦なく其処を親指で押した
途端にラインの身体が跳ね上がり、尻尾がピンと真っ直ぐになる
表情は完全に混乱してしまったのか
驚いたり、しきりに辺りを見渡したりして解決策を探っていた
「マグ・・・これ・・」
漸く僕の名前を呼ぶと、居心地悪そうにラインはそれだけを言った
僕の腕の中でそそり立つ自身をどうしていいのか分からないのだろう
「気持ちいい?」
どんな気分なのか、知りたくて思わず僕はそんな事を口にしていた
その直後に強く握ると扱き上げる
大きなその身体が僕に凭れかかって何度も震えていた
「うぁ・・・・マグ・・」
何も分からなくても気持ちいい事だけは確かなのか、次第に喘ぎ声が大きくなり始める
満足すると、僕は最後に残った布を剥ぎ取った
完全に勃起した状態のラインのそれは次の刺激を求めて震えながら透明な液体を垂らしていて
薄暗いこの場所でも血管が絡み付いているのまでよく見えた
ラインも、自分のものが此処まで敏感に反応をしているのを見るのは初めてなのか
肩で息をしながら呆然とそれを見つめていた
震えているラインを掴む
それだけで、先端から更に液体が溢れて手を濡らされる
ライン自身は解放を待ちわびているのだが、ラインはそれが分からないのか
それでも刺激を求めて緩く腰を動かしていた
その身体を押すと、ラインは倒れそうになるが尻餅を着いたところで慌てて両手を後ろに回して体勢を整える
丁度足を開いて腰を突き出す様な形になっていた
これ以上無い程いい格好だと、それを見て思いながら僕は服を脱ぐ
上半身を裸にしてから、身体を屈ませると
手に掴んでいたラインの陰茎をいきなり口に咥えた
「っはあぁぁ・・・・」
盛大に息を吐いて、声をラインが上げた
身体中を強張らせながらも腰をゆっくりと動かす
僕はといえば必死だった、勢いでやってしまっているが咥えるのは初めてなのだ
口の中にラインの味が広がって、それを味わう事に夢中になっていた
舌を這わせるとゆっくりと顔を上下させる
「はぁっ・・・・ま、マグ・・うんっ・・・」
ラインは完全に快楽に呑まれ始めているのか、天を仰いでだらしなく開けた口から涎を垂らしていた
口内にあるライン自身は、信じられない程の質量を持っていて思わず咽てしまいそうになるのだが
必死に堪えると生理的に浮かんだ涙をそのままに唾液を絡ませていた
顔を上げていたラインも、咥えている僕の顔を見て腰を振り始めていた
ラインをもっと味わいたい
そう思っていた頃、終わりが訪れた
「あっ、出る!グッッ!!!」
声を上げるのを我慢しているのか、必死にラインは口を閉じていたのだが
牙を剥き出しにすると、再び顔を上げてから全身を跳ね上がらせた
その拍子に亀頭の部分が喉を擦り上げて、ラインはついに射精を果たした
脈打つのを舌で感じた後口内に大量の精液が吐き出される
吐き気を堪えながら少し口を引くと、水の濡れる音がして根元の部分が現れる
依然震えているそれは、精液を送り出す毎に一瞬だけ太くなっている様に見えて酷く卑猥だったけれど
それよりも僕は口内に溢れるラインの精液に頭が回っていた
大量に出しているのにまだ溢れ出ているせいで、このままでは受けきれないだろう
一度唾を飲み込んでから、次は精液を喉に通し始める
鼻に青臭い臭いが充満したけれど、ラインのものだと言い聞かせるとそれほど苦には感じられなかった
喉を通して減った分の精液が、またラインの尿道から溢れ出る
ラインは既に小刻みに動いて呻いているだけの状態になっていた
漸く絶頂が治まると、ゆっくりと口からラインを解放する
飲み込みきれなかったものやライン自身に絡みついた精液が、ラインを白く汚していた
陰茎を伝って下に流れると、陰毛や玉の部分に纏わりつき始める
僕は顔を上げると、口内にまだ大量にあるラインの精液を一気に飲み干した
息苦しさから解放されて何度も荒く呼吸をする
ラインは、僕よりもっと苦しそうだった
「今のは・・」
漸く射精を終えて現実に引き戻されたのか、ラインが僕に問い掛ける
その股間にあるものは未だに自己主張を続けていた
「気持ちよかったでしょ」
そう言うと、ラインが俯いた後に小さく頷いていた
何時もは排泄にしか使っていない部分を口に含まれて、挙句の果てに絶頂まで味わったせいで
多分、恥ずかしいのだろう
それでも文句は無いのか、呼吸が整っても何かを責める様な事はなかった
落ち着いたのに合わせてライン自身も段々と萎え始めているのを見つけると
僕は迷う事無く再びそれを掴んだ
流石に今度はラインも声を上げなかったけど、それでも僕を見てまた戸惑った顔をしていた
そう、ラインは気持ちよかったのかも知れないけれど僕はまだ何もしていない
といってもラインのイく姿を見たからある意味で充分満足なんだけれど
脱いでいない下の服を一気にずり下ろすと、今までのラインを見ていたせいか僕自身も痛い程勃起していた
ラインもそれを見て漸く、僕が済んでいないのに気付いたのだろう
またあの快感をくれるのかと、期待に満ちた目で見ていた
ラインを掴んでいた手を放す
既に次の刺激を待ち構えているのか再び大きくなっていたが、それにはもう触れずに
口の中に集めていた涎を手に吐き出した
先程のラインの精液がまだ残っていて、酷く粘着質な液体が生まれる
それを、僕は自分の股の間に滑り込ませた
卑猥な音が洩れる
「ん・・・」
それと同時に僕の声も洩れた
「マグ・・・?」
ラインは不思議そうに僕を見ている
ラインはてっきり、僕が自分のを扱くと思っていたのだろう
それでも僕の指が触っているのはその先にあるもので
たった今、指を入れたところだった
無理矢理一本目を奥に突き入れると、身体が急に熱くなった
虚ろな目で吐息を吐き出す僕を見てラインも何かを感じ取ったのか
その顔が、雄の顔になっていた
二本に増やして暫く弄ってから引き抜くと、新しく唾を渡して今度は三本入れる
指だけでも走る僅かな痛みに僕は顔を顰めた
体勢が不安定なのを察したのか、ラインが身体を支えてくれる
「ありがと・・・」
そう言った次に、キスをした
舌を触れ合わせながらも指を開いて広げる様にする
ラインが解放してくれた頃、指を引き抜いた
火照った身体を布の上に仰向けにして横になる
股を広げた間に、ゆっくりとラインが身体を入れてきた
そのまま尻を軽く上げる
「入れれば・・・いいのか?」
一度、覗き込んでからラインは言葉を発する
此処まで来てそれ以外の発想もないのは分かっているのだろうが
それでもラインは確認のために訊いてきた
それに頷くと、ラインが僕の腰を掴んで更に身体を密着させる
「・・唾・・・つけて」
それを聞くと耳を震わせて、直ぐにラインは口から大量の唾を吐き出して手に取ると
自らの性器を唾液に包ませる
そのまま何度か扱く音と、ラインの声が聞こえた
「ライン・・入れて」
扱く事に夢中になりかけているラインに、もっといいものがあると言い聞かせる様に
尻尾をくねらせて呼んだ
亀頭の部分が、肛門に当てられた
「・・・つっ・・」
痛みが走る、それでもこの程度なら
そう思っていた僕の甘い考えは、次に吹き飛んだ
「いっ!!ライ・・・ひあぁっ!!」
悲鳴としか思えない声が口から零れた
侵入を果たしたまではよかった、其処まではよかったのだけど
ラインの大きさで痛みを感じた次の瞬間、一気にラインが腰を突き出したのだ
あまりの痛みに、涙が溢れ出してくる
「ラインっ・・痛い・・痛い」
泣き出しながらそう言うと、ラインが慌てて腰を引く
それでも全て引き抜かないのは、耐え難い刺激があるからだろう
そのまま腰が前にいかない様に身体を倒すと、僕の身体を抱き締める
抱き締められながら、僕は何度もラインの厚い胸板を乱暴に叩いた
もっとも、今の状態じゃ強い力も出ないし元々の力も大したことないのだから
ラインは痛くもなんともないのだろうけど
止まる事無く溢れる涙を見て、ラインも僕が辛いのが伝わったのか
目尻にある涙を何度も何度も舐め取り、何時もの様に優しく頬も舐めてくれていた
胸を叩いていた手を、その首に回す
泣き止むまで、ラインは動かないでいてくれていた
五分程、動かずに抱き合っていたのか
痛みが漸く引き始めて僕はほっとしていた
感じるのは僕の中に居るラインの存在
ラインも自分を抑えるのに必死なのか、開いた口から垂れた涎が僕の首元を汚していた
「動いていいよ・・・」
「平気なのか?」
「・・・・・ゆっくり」
それにラインは頷くと、静かに腰を進め始める
「あ・・・ライン・・うん・・・・」
ラインが入ってくる
少しずつ、少しずつ押し広げる様にその巨大な雄が突き進む
時折痛みに顔を顰めた時だけ動きを止めて、その度に頬や首筋を撫でて大丈夫なのかと言ってくれる
それだけで、気持ち良くなくてもラインを受け入れていたい気分になった
ラインを受け入れる前から、何度も慣らして時間を掛ければ指でも快感を得ていたのだが
あまりのラインの性急さに、その感じる事が出来るという余裕も、感じる事すらも忘れていた
それでも今はそれを感じる事が出来る
奥に進む度にラインの身体も小刻みに震えたり、僕の中にあるそれが
締め付けに耐えられず震えてまた透明な液体を出しているのが充分に分かる
突然、ラインの動きが止まった
それと同じ時に、少し硬い陰毛の感触を感じる
全て入ったのだと直ぐに理解する事が出来た
「ライン・・・気持ちいい・・?」
何回言っているのだろう、そう考えたけれど上手く回数が浮かんでこなかった
ラインは何度も息を吐いて涎を垂らして、まともに質問に答えられなさそうだったけれど
一度、大きく頷いてくれた
一層強くラインの腕が僕を抱き締めてくれる
じゃれる事が好きなラインにとっては、このまま繋がったまま眠ってしまいたいのかも知れなかった
それでも、僕が少し腰を動かすと微かに呻いた後身体を上げたラインが腰を引き始めた
中に埋まっていたラインの陰茎が引きずり出される
音は聞こえないはずなのに、何か擦れている様な音が聞こえた気がした
亀頭の先端まで引き抜くと、ラインの涎がお腹に落ちる
ラインと、視線が絡み合った
もっと強く入れたい
表情だけで、何を言いたいのかが伝わってくる
それに、僕は微笑んで見せた
「ふあっ!」
それと同時だろうか、少し後だろうか
ラインが腰を突き刺す様に動いた
僕の上げた悲鳴には、痛みと快楽の半分ずつが含まれていて
それにラインは申し訳無さそうな顔をしたが、既に自制が利かなくなっているのか
もう一度僕を固く抱き締めると乱暴に腰を振り出した
泣き叫ぶ様な声を上げる
それでも、僕とラインの間に挟まれた僕自身は刺激を受けて涎を垂らしていた
「マグ・・・!!」
ラインが何かを口にした
ラインの責めに喘いでいる僕にはそれは届かなくて、ただラインを感じさせるために僕もまた首に手を回す
互いの息遣いや腰使いが、時折交差してはまた外れて交差するのを繰り返していた
「マグ!マグっ!!」
唸り声を混ぜながら、ラインは叫んでいた
再び射精しそうなのだろう、僕もほとんど入らない力を必死に込めて腰を振った
中で、ラインが膨らんだ様な気がした
「うおおおっ!!!」
最後に、ラインが雄の狼らしい雄叫びを上げながら僕の中で爆ぜた
僕の喘ぎは完全にその叫びに掻き消されていて、僕自身にも聞こえなくて
僕の中にただ精液を撒き散らすライン自身の脈動が、身体全体に伝わってきていた
それを感じながら、しつこく快楽を求めて腰を振る狼の腹に擦られ僕も今日初めての射精を果たしていた
どれくらいの間、そのままの姿勢で居たのか
全てを出し切ったラインはただ呼吸を繰り返して、名残惜しいのか時々半勃ち状態のまま腰を動かしていて
適度な大きさになったライン自身の動きに僕は短く喘いでいた
奥に入れると、大量に放出された精液が溢れ出てくる
それを見て本能で、僕を犯したのだと認識したのか
満足そうにラインは腰を引いて陰茎を抜き取った
引き出す時に刺激を与えられて三度それは大きくなっていたけど
ラインはもう充分に満足したのか、僕を気遣っているのか
身体を倒すと、精液塗れになるのも厭わずに抱きついてくれていた
本当は身体を洗いたいのだけど、既に夜も深く
それでいて疲れが身体中を支配していて僕はとても動けなくて
止めに、覆い被さりながらも潰さぬ様に抱き締めて幸せそうに微笑むラインの顔を見ていると
段々と全部どうでもいいことの様に思い始めてきて、そのままラインの胸に頬を寄せると意識は自然に遠退いていった